女性活躍社会の推進に踊らされないための株式市場からの客観視
松田千恵子・東京都立大学教授は、「学術的には、女性取締役登用と業績との相関はないという研究結果も多い」と指摘する(10/6付け日経新聞「経済教室」企業統治の課題(下)能力伴う多様性の確保へ)。松田先生はその理由として「トークニズム(お飾り)」を挙げている。
なるほど、ランキングの1位のディップも2位のニデック(6594)も、女性取締役5人全員が社外取締役だ。3位のZOZO(3092)は取締役11人のうち5人が女性。そのひとり、永田佑子氏はヤフーを経て、親会社Zホールディングス(ヤフー、Zホールディングスともに現LINEヤフー(4689))の執行役員となり、現職へ。したがって生え抜きとは言えない。残り4人は社外取締役だ。
松田先生の研究では、女性社外取締役の存在は業績と無関係だったが、実力で勝ち上がってきた女性執行役員の存在は業績にプラスの影響を与えたという。日本は圧倒的に、この「実力で勝ち上がってきた女性役員」が足りていないことは明白だ。だから、数合わせのように「社外取締役」で女性役員の比率を「水増し」するが、そんなことはなんの役にも立たないということを株式市場は見抜いている。それがこの実証分析の結果の読み方であろう。
誤解を恐れずにいうと、「女性取締役比率」というものに意味があるとは思えない。当たり前のこと過ぎるが、「男女平等」である。男だから優れていて、女だから劣っているということは、ビジネスの世界にはない。仕事においては男も女も関係なく、性差より個人差のほうが圧倒的に大きいはずである。仕事ができる有能な人物とそうでない人がいるだけである。
もう一度いうと、男女平等なのだから女が優れているというわけでもない。したがって取締役会に占める女性の比率を増やしたところで、その役会のクオリティや機能が高まるわけではなかろう。「女性取締役比率」というファクターが株価パフォーマンスに影響しないのは至極当然である。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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