(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦別姓や家庭内別居など、多様化する夫婦のかたち。夫婦という関係でもお互いの自由は尊重すべきですが、そこに相続が発生すると思わぬデメリットが生じる可能性もあると、株式会社アイポス代表の森拓哉氏はいいます。本記事では、熟年別居中に夫が亡くなった夫婦の事例とともに、別居婚の意外な落とし穴について解説します。

突然の借金問題…死後3ヵ月以降も相続放棄は可能?

Bさんは夫婦関係のまま別居という状態でしたが、家族がどう暮らしているのかわからない場合に、今回のように突然借金問題が生じることがあります。亡くなった方が、家族に黙って借金をしているケースです。借金の理由は、男女関係、交友関係、ギャンブル、詐欺まがいの投資の失敗など、さまざまです。家族が亡くなった際には、故人の財産や借金の状況を正確に把握する必要があります。

 

Bさんの場合は、娘の話しぶりからもAさんの生活が荒れていたことは容易に想像できます。このような話を聞いた場合、借金は想定内の事態でしょう。

 

相続放棄の期限は3ヵ月とされていますが、条件はあるものの家庭裁判所に申し立てることで相続放棄をするかどうかの判断期間を伸長させることができます。伸ばせる期間は、一般的には1ヵ月~3ヵ月ほどの期間であることが多いようです。

 

しかし、期間を延長したからといって、当然すべてが解決するわけではありません。財産の状況を把握して、期限内に相続をするのか放棄をするのかを決める必要があります。ですが、申し立てによって、一時的に時間を稼げるということだけでも知っておいたほうがよいでしょう。手続きに不安があれば早い段階で弁護士に相談することも必要です。

 

夫婦生活や家族の在り方はさまざまで、Bさんの選択は誰も否定できません。しかし、先々起こりうることを予想しながら、最善の選択をすることが大切です。家族と離れて暮らす事情は人それぞれですが、法定相続人である以上は、財産を管理する義務が伴います。そのリスクも含めて、老後の暮らしを計画していく必要があるのです。

 

夫婦間の大きな決断には「年金」にも注意

50歳を迎えたBさんが熟年別居を選ぶにあたり、検討すべきだったこととしてもうひとつ、年金の課題が挙げられます。今回のケースでは、BさんはAさんの扶養家族に入り3号被保険者となっていたため、Bさんはご主人の遺族年金を受給することができました。一方、離婚していなかったため法定相続人として債務も承継しなければならなくなりました。遺族年金はメリットで、債務の承継はデメリットとなります。

 

もし仮に離婚していた場合は、法定相続人ではなくなりますから、債務の承継をする必要はなくなります。一方、Aさんに万一のことがあると、遺族年金が受け取れなくなりますが、その代わりに離婚時に所定の手続きをすることでAさんの厚生年金部分を年金分割することができます。


自分の道を選ぶ際に、その道を選ぶことでどのような影響をおよぼすか、年金の損得もひとつの視点として考えておくと、よりよい選択ができるでしょう。

 

※本記事は、実際にあった出来事をベースにしたものですが、登場人物や設定などはプライバシーの観点から入れ替えている部分があります。また、実際の相続の現場は、論点が複雑に入り組むことが多々あり、すべての脈絡を盛り込むことで話の流れがわかりにくくなります。このため、現実に起こった出来事のなかで、見落とされた論点に焦点を当てて一部脚色を加えて記事化しています。

 

 

森 拓哉

株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン

代表取締役

 

 

 

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※プライバシー保護の観点から、実際の相談者および相談内容を一部変更しています。

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