(※写真はイメージです/PIXTA)

求人募集などで、「固定残業代」という言葉を目にしたことはないだろうか。もしくは自分の会社に導入されている、という人もいるだろう。固定残業代とはどのような制度で、企業・雇用者にはどのようなメリット・デメリットがあるのか。ブラック企業被害対策弁護団に所属する明石順平弁護士が、実際の判例などを交えて解説する。

過労死が発生した「日本海庄や事件」

この固定残業代制度が悪用され、過労死が発生した事件が、日本海庄や事件である。この事件では、新卒者の基本給は19万4,500円、うち7万1,300円が「80時間分の」固定残業代とされていた。しかも、労働時間が80時間に満たない場合は不足分が差し引かれていた。こういった異常な労働条件のもと、新卒正社員の方(当時24歳)が、入社後わずか4ヵ月にして心機能不全で死亡したのである。

 

この方の労働時間は、「死亡前の1ヵ月間では、総労働時間約245時間、時間外労働時間数約103時間、2ヵ月目では、総労働時間約284時間、時間外労働時間数約116時間、3ヵ月目では、総労働時間約314時間、時間外労働時間数約141時間、4ヵ月目では、総労働時間約261時間、時間外労働時間数約88時間となっており、恒常的な長時間労働となっていた」と裁判において認定された。

 

あまりにも酷い。固定残業代という屁理屈を活用して残業代というブレーキを外し、異常な長時間労働を可能にしたことが、こうした悲劇につながったのである。

労働時間を記録しよう

この固定残業代であるが、有効となるか否かはケースバイケースである。無効と判断した裁判例もたくさんある。無効になった場合、固定残業代は基本給と同様に扱われ、残業代算定基礎時給に算入される。また、固定残業代分は「残業代を払ったこと」にされない。

 

具体的に言うと、「基本給20万円、固定残業代10万円」とされていたものが、単に「基本給30万円」と扱われる。したがって、残業代は極めて高額なものになる。

 

無効になる場合もあるのだから、諦めてはいけない。働く皆さんが出来ることは、自分で労働時間を記録しておくことだ。スマホのアプリや自分宛メール等、機械的に記録されるものは証明力が高い。ブラック企業は労働時間をきちんと記録していないことが多いし、記録していても改ざんすることがあるので、自分で記録することが重要である。

 

 

弁護士

ブラック企業被害対策弁護団所属

明石順平

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