(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

●米国では強い雇用指標に長期金利上昇と株安で反応、ドル円は一時150円台をつけて乱高下。

●米金利上昇と株安は安易な利下げ期待の修正によるもので一巡なら金利上昇と株安は一服へ。

●介入は月末に確認可、ドル円はドル高値圏での推移が続き米長期金利上昇一服でドル高収束。

米国では強い雇用指標に長期金利上昇と株安で反応、ドル円は一時150円台をつけて乱高下

10月3日発表された8月の米雇用動態調査(JOLTS)は、非農業部門の求人件数が961万件と市場予想(881.5万件)を上回り、労働需給の引き締まりを示唆する結果となりました。これを受け、米国の金融引き締めが長期化するとの見方が強まると、米10年国債利回りは一時4.81%近辺まで上昇(価格は下落)し、連日でおよそ16年ぶりの高水準をつける展開となり、ダウ工業株30種平均など米主要株価指数は軒並み大幅安となりました。

 

一方、為替市場では、JOLTS発表後の米長期金利上昇を背景に、ドル円は一時1ドル=150円15銭レベルに達し、2022年10月21日以来、約1年ぶりのドル高・円安水準をつけました。しかしながら、ドル円は150円台をつけた直後、一気に147円43銭レベルまでドル安・円高が進み、その後はすぐに149円台に戻るなど、非常に値動きの激しい相場展開になりました。

米金利上昇と株安は安易な利下げ期待の修正によるもので一巡なら金利上昇と株安は一服へ

米10年国債利回りは8月に、しっかり4%台乗せとなった後、米経済の底堅さを背景に、上昇基調が続いています。長期金利が上昇する環境のなかでは、株価収益率(PER)の高いハイテク株の相対的な割高感が意識されやすく、このところの米主要株価指数の動きをみると、やはりハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数のパフォーマンスは低調です(図表1)。また、米株安の影響は日本株にも及んでいることが確認されます。

 

[図表1]最近の日米主要株価指数の騰落率

 

本来、米経済の強さは株高要因ですが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場などでは、経済の強さにもかかわらず、来年の利下げの織り込みがかなり進んでいたため、これが急速に修正され、米長期金利上昇と株安につながったと推測されます。そのため、安易な利下げ期待の修正が一巡し、米連邦準備制度理事会(FRB)による政策の舵取りが市場に信認されれば、米長期金利上昇と株安は一服する可能性が高いと考えています。

介入は月末に確認可、ドル円はドル高値圏での推移が続き米長期金利上昇一服でドル高収束

ドル円相場について、市場では為替介入が実施されたとの思惑もみられますが、鈴木俊一財務相が為替介入の判断として10月3日に言及したボラティリティ(変動率)は、昨日それほど上昇していませんでした(図表2)。また、神田真人財務官は4日、「介入の有無はコメントを控える」と述べており、為替介入が行われたか否かの確認は、今月末に財務省が発表する「外国為替平衡操作の実施状況」を待つことになります。

 

[図表2]ドル円のボラティリティの推移

 

一般に、為替介入は相場の過度な変動を一時的に抑制できても、トレンド自体を変えることは困難と解釈されています。実際、昨年9月と10月にドル売り・円買いの為替介入が行われましたが、結局、昨日150円台をつけるに至っています。ドル円は当面、ドル高値圏での揉み合いが続くとみていますが、前述の通り、米利下げ期待の修正一巡などで米長期金利上昇が一服すれば、ドル高・円安の流れは収束していくと思われます。

 

(2023年10月4日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『一時「1ドル=150円台」…非常に値動きの激しい相場展開、今後のドル円をどう見るか?【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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