(※写真はイメージです/PIXTA)

父から贈与を受けた/受けていないで訴訟になったX氏。裁判によって贈与そのものが失くなる可能性があったため、贈与税の申告は後回しにしていました。裁判の結果としては、父からの贈与を受けた、という判断に。あとから贈与税の申告をしますが、事態は思わぬ方向へ……。本記事では、X氏の事例を取り上げ、贈与税の「期限後申告」が認められないケースについて、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)より、同氏が解説します。

「別件訴訟」と「贈与税未納」という行動の矛盾

「なお、当該最高裁判決では、どの程度の具体的な主張立証がなされれば、「相続財産に属する可能性が小さい」となるかは、直接判示されていない。」とあることから事実認定に着地します。このとき、

 

①(筆者番号付す)贈与の前後における当該贈与財産の管理及び運用の状況

②(筆者番号付す)当該受贈財産から生じる利益の受領状況等を確認することはもちろん

③(筆者番号付す)別件の訴訟における納税者の主張及びその証拠」の確認の重要性

 

が問われています。

 

①、②については先述において詳細検討済です。③について、別件訴訟で納税者が贈与があったと主張している、すなわち当事者では贈与の意思の合致があったと主張しているにもかかわらず、では、判決が確定するまでは当該主張が通るか分からないので申告しない、では矛盾しているといえます。原則に従いいったん申告、別件訴訟の結果次第で更正の請求、修正申告をするのが無難です。

 

この場合、③まで当局は確認するため、③での証拠(判決未確定)が逆に納税者主張が通らない要因になりえます。③がある場合、原則通りの申告をすべきか(又はしないものか)との一貫性がなければならないことになり、証拠としての別件訴訟資料は当該一貫性に従っているかを確認することになります。

 

 

******************参考******************

※1 神戸地裁平成5年3月29日判決(なお、同判決は、その控訴審である大阪高裁平成5年11月19日判決により維持され確定している)。

 

※2 本判決の第一審では、上記最高判決を参照し、Xが本件贈与は有効であると「認識」していたと判断してXの請求を棄却していたが、本判決は、第一審の当該部分を引用していない。

 

※3 判例タイムズ1010号233頁。

 

 

伊藤 俊一

税理士

 

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