前回は、地主と不動産会社の共同事業「等価交換」の概要について説明しました。今回は、地方都市中心部の活気を取り戻す「住居併設」の商業用建物について見ていきます。

業務・商業用途の建物になりがちな中心部の土地活用

前回の続きです。もう一つ、地方都市中心部の疲弊する理由として確信している点があります。それは、中心部から住居が失われ、業務や商業用途の建物ばかりになってしまったという点です。

 

地方都市といえども中心部ですから、地価は周囲に比べ高い傾向にあります。固定資産税をはじめ、土地の保有コストは高くつきます。さらに相続時には、資産価値がそれだけ高く評価され、その結果、税負担がかさむことも考えられます。

 

一代くらいは耐えられますが、二代、三代と続くと潜在的な力も落ちてきます。地主は税対策として、土地の有効活用を検討するでしょう。活用を図ることで収益を上げ、固定資産税をはじめとする保有コストを捻出するわけです。

 

金融機関からの融資を元手に建物を建設し、それを貸しに出せば、相続税対策としても有効です。ただ、その場合には得てして、業務・商業用途の建物になりがちです。居住用途に比べれば、賃料負担力が高く、より高額の賃料を得ることが可能だからです。

 

住居、特に賃貸住戸はこうして、地方都市の中心部から次第に駆逐され、業務・商業用途の建物に置き換わってきたのです。ところがそれは、住民が都市の中心部からいなくなり、街の活気を低下させていきます。

街に活気を取り戻すために理想的な形態とは?

社会は常に人がいるからこそ成り立っているのだと思います。居住者がいなくなれば、いくら昼の賑わいがあったとしても、街の活気は維持できません。また、土曜日、日曜日には歩いている住人がいない都市もできてきます。

 

繁華街として賑わっていた時代には、商店街にまだ商店主家族が住んでいました。それが、先ほど申し上げた理由から建物は業務・商業用途に変わってしまったことで、郊外に移り住み、そこから都市の中心部に通うような経営形態に移行してしまったのです。

 

業務・商業用途の建物を建設するにしても、街に活気を取り戻す観点に立てば、住居併設が理想であると思います。事業計画上も決して、無理のある提案ではないはずです。むしろ、合理的であるとさえ言えます。それは、階層別の賃料に正反対の傾向が見られるからです。

 

業務・商業用途が一般に、下層階ほど高額なのに対し、居住用途では一般に、上層階ほど高額なのです。したがって、これらをうまく組み合わせれば、階層別の賃料収入をほぼ一定に保つことができます。

 

もちろん、1階エントランスは、業務・商業用途と居住用途とで別々に確保するなど、動線の混乱を招かないような計画上の配慮は欠かせません。賃借人として住居を借りて住む側にとっても、中心部に住居があれば、通勤・通学に40、50分から1時間も時間を掛けずに済むようになります。

 

その時間をほかに充てられるようになれば、それだけ暮らしを豊かにできるのではないでしょうか。

本連載は、2014年6月12日刊行の書籍『変形地の価値を高めるマンションづくり』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

変形地の価値を高める マンションづくり

変形地の価値を高める マンションづくり

宮坂 正寛

幻冬舎メディアコンサルティング

別荘地のような斜面地、一角に他人の土地を挟む変形地、奥まった場所にある旗竿地…。 活用をためらってしまうような条件の悪い土地を活用するためには、その土地の潜在価値を引き出すことが重要です。本書では、そのために必…

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