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相続人不存在とは「亡くなった人に法定相続人がいないこと」をいいます。生涯結婚することがなく子供も兄弟姉妹もいない場合や、法定相続人になるはずだった人が全員先に亡くなっていた場合では、法定相続人がいないため相続人不存在となります。また、法定相続人がいても全員が相続放棄した場合も相続人不存在となります。このような場合、亡くなった人の遺産はどうなるのでしょうか。みていきましょう。

相続人不存在の場合の相続手続きの流れと注意点

相続人不存在の場合の相続手続きには次のようなものがあり、終了までに半年以上の期間が必要とされています。債権者、受遺者、特別縁故者に分配してもなお余った遺産は国庫に納められます。

 

相続財産清算人の選任

法定相続人がいない人の遺産は、相続財産清算人が管理します。周囲の人が勝手に処分することはできません(相続財産清算人は、以前は「相続財産管理人」と呼ばれていましたが、民法の改正により令和5年4月1日から名称が改められました)。

 

相続財産清算人を選任するためには、利害関係者や検察官が家庭裁判所に申し立てます。利害関係者とは、次のような人のことをさします。

 

●債権者(亡くなった人にお金を貸している人または家主など)

●特定受遺者(遺言で指定された遺産を受け取ることができる人)

●特別縁故者(亡くなった人と同一生計にあった人や療養看護に努めた人など)

 

相続財産清算人の選任に必要なものは次のとおりです。

 

申立先:被相続人(亡くなった人)の最後の住所を管轄する家庭裁判所

必要書類

●被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

●被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本(被相続人の家族構成によっては、これら以外の人の出生から死亡までの戸籍謄本も必要です)

●被相続人の住民票除票または戸籍附票

●(相続人全員が相続放棄した場合)相続人全員の相続放棄申述受理証明書

●申立人と被相続人との利害関係がわかる資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書の写しなど)

●相続財産の内訳がわかる資料(不動産登記事項証明書、預金通帳の写しなど)

●収入印紙800円分

●連絡用の郵便切手

●官報公告料5,075円

 

相続財産清算人には報酬を支払う必要があります。通常は遺産から差し引かれますが、遺産が少ない場合は申立人が家庭裁判所に予納金を納めて報酬に充てる場合があります。

 

債権者・受遺者への支払

相続財産清算人が選任されれば、官報で公告されます。この公告は相続人の捜索を兼ねていて、相続人がいれば申し出るように促します。これと並行して、相続財産の債権者・受遺者の確認の公告が行われ、債権者・受遺者がいれば遺産からその人に支払われます。この時点で遺産がなくなれば、手続きは終了します。

 

相続人不存在の確定

相続財産清算人の選任・相続人捜索の公告は、6ヵ月以上の期間を定めて行われます。期間の満了までに相続人が見つからなければ相続人不存在が確定します。

 

特別縁故者に対する分与

相続人不存在の場合は、特別縁故者が遺産をもらうことができます。相続人がいないことが確定してから3ヵ月以内に家庭裁判所に「相続財産分与の申し立て」を行います。

 

ただし、申し立てをすれば誰でも遺産をもらえるわけではなく、家庭裁判所が個別のケースに応じて判断します。特別縁故者として認められるための要件は次の3つです。

 

1.被相続人と同一生計にあった人(内縁の妻や夫、事実上の養子・養親など)

2.被相続人の療養看護に努めた人

3.1と2に準じて特別の縁故があった人

 

特別縁故者に遺産を分与してもなお余った遺産は、相続財産清算人によって国庫に納められます。

 

相続人不存在の相続手続きの注意点

ここまで相続人不存在の場合の相続手続きについてお伝えしました。これらの手続きを進める場合は、次のような点に注意しましょう。

 

●相続人がいない人の財産は周囲の人が勝手に処分することはできず、相続財産清算人を選任しなければならない。

●相続財産清算人には報酬を支払う必要がある。

●特別縁故者は家庭裁判所に「相続財産分与の申し立て」をしなければ遺産をもらえない。

●特別縁故者より先に債権者・受遺者への支払いが行われるため、特別縁故者は遺産をもらえない場合がある。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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