20年で給料どのくらい増えた?→日本「0.4%」韓国「43.5%」…圧倒的な差がついたワケ【エコノミストが解説】

20年で給料どのくらい増えた?→日本「0.4%」韓国「43.5%」…圧倒的な差がついたワケ【エコノミストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

バブル崩壊から30年超、日本経済はいまも停滞したままです。しかしこの間、世界各国の賃金は右肩上がりで伸びていると、『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』著者で第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏はいいます。日本経済停滞の理由と、韓国が驚異的な賃金の伸びを実現したカラクリについて、“ビッグマック指数”など複数のデータを紐解きながら、永濱氏が解説します。

いまや日本の賃金は韓国よりも低い

日本が安いのは物価だけではありません。[図表3]は、主要先進国と言われるG7諸国(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)+韓国の1年あたりの平均実質賃金を算出したグラフです。

 

出所:OECD
[図表3]G7諸国と韓国の実質賃金の推移 出所:OECD

 

「購買力平価」とは、生活実感に近いかたちで国際比較ができる“物価のものさし”

日本のずいぶん低い位置が気になると思いますが、まずは用語を説明しておきます。縦軸にある「購買力平価」とは、わかりやすく言えば、「ビッグマック指数」を、すべての財・サービスに換算したようなものです。もう少し正確に言うと、「自国通貨と外国通貨で同じものを購入できる比率で算出された為替レート」です。これで実質賃金を比較しています。

 

例えば、同じ量、同じ品質の製品がアメリカで1ドル、日本で150円だった場合には、実際の為替が1ドル=116円だったとしても、1ドル=150円として考えるということになります。

 

なぜこれを使うかと言えば、国家間で物価水準が異なるからです。もし賃金の額面が他国より小さかったとしても、国内の物価がさらに安ければ、相対的にモノやサービスをたくさん手に入れることができますし、逆もまたしかりです。つまり「購買力平価」で見ることで、単に為替レートで単位を揃えただけでは見えてこない、より生活実感に近いかたちでの国際比較ができるのです。

 

アメリカや韓国が着実に実質賃金を上げているワケ

さて、このグラフを見ると、圧倒的に飛び抜けているのがアメリカです。2000年から高水準で伸び続け、2020年時点での実質賃金は7万ドル(750万円)に届く勢いです。これにカナダ、ドイツが5万5000ドル(590万円)前後で続きます。

 

一方で日本は、イタリアに次いで低い位置にいます。2015年以降は韓国にも抜かれ、差がひらいています。イタリアはコロナ・ショックの影響で2020年は最下位になりましたが、2000年以降2019年まで、日本はイタリアより低い賃金でした。

 

長い間、賃金が上昇していない国も日本とイタリアだけです。日本は0.4%、イタリアはマイナス3.6%(ただし2019年時点ならプラス2.5%)で、2000年からの20年間、実質的に「昇給ゼロ」状態だったことを示しています。

 

対してアメリカは25.3%、カナダは25.5%、イギリスは17.3%、韓国に至っては43.5%と、世界の国々の賃金は右肩上がりで伸びています。いかに日本の経済が、長期的に停滞しているかがわかります。

 

なお、韓国が順調に賃金上昇しているのは、最低賃金を段階的に引き上げ続けていることも大きな要因です。2013年~2017年の引き上げ率の平均値を見ると7.2%で、さらに2018年からは文在寅(ムン・ジェイン)政権が10%を超える大幅な最低賃金の引き上げを行いました。

 

この間、安い人件費でなんとかもっていたような中小企業はかなり姿を消して失業者も増えましたので、必ずしも良いことばかりではないのですが、国全体の賃金上昇には貢献したと言えます。

 

 

永濱 利廣

第一生命経済研究所

首席エコノミスト

 

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※本連載は、永濱利廣氏による著書『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか

永濱 利廣

講談社

どうして日本の国力は30年以上も低下し続けているのか? 低所得・低物価・低金利・低成長の「4低」=「日本病」に喘ぐニッポンを、気鋭のエコノミストが分析!

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