中高年層にブーム!…定年退職後を見据えた「資格取得」と「教育訓練給付制度」の活用術【FPが解説】

中高年層にブーム!…定年退職後を見据えた「資格取得」と「教育訓練給付制度」の活用術【FPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

近年では定年前の中高年層の間で、自身のお金にまつわる問題解決や、再就職、開業を目的とした「学び直し=リスキリング」が流行しています。人気の高い資格、ビジネスに有利な資格にはどのようなものがあるのでしょうか。活用できる公的な支援制度とあわせてみていきます。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

相続、老後資金管理…中高年世代に降りかかる「お金の問題」

生徒:私は今年50歳ですが、最近までお金について考えることといえば、家計の収支くらいしかありませんでした。しかし、同年代の友人が、退職金、年金、相続などについて心配しているのを見聞きするうち、自分もお金について真剣に勉強しなければと思いはじめました。老後資金の管理や相続は自分にも必ず降りかかる問題ですが、解決力を身につけるにはどうしたらいいでしょう?

 

先生:では「ファイナンシャル・プランニング技能士3級」を受験してみてはどうでしょう。

 

生徒:なぜその資格がお勧めなのでしょうか?

 

先生:お金に関する資格には「ファイナンシャル・プランニング技能士」「簿記検定」「宅地建物取引士」などがありますが、個人の老後の生き方を考えるには、ファイナンシャル・プランニング技能士の勉強が最適です。とくに近年、3級の試験の受験者が急増しており、2021年以降は毎年10万人を超えています。年金などの社会保険、金融資産や不動産の投資、生命保険、税金、相続など幅広い分野を学べるのが理由だと思われます。

 

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自分の人生に役立てるため、資格の勉強をする人が急増中

生徒:ファイナンシャル・プランニング技能士とは、もともと金融機関に勤務する人が技能を向上させたり、ファイナンシャル・プランナーとして独立開業を目指したりする人のための資格ですね。

 

先生:そうです。ですが、ここ数年はお金に関する知識をきちんと身につけようとして資格試験を受験する人が、シニア層を中心に広がっているのです。自分の家計管理や資産運用に役立てることを主目的とするなら、3級だけでも十分ですね。

 

生徒:資格を取得して稼ぐのではなく、自分の勉強のために受験するわけですね。

 

先生:ファイナンシャル・プランニング技能士3級試験を受験する人の9割以上が、自己啓発を目的にしています。なかでも、50代のシニア層が定年退職前後に学び始めるケースが多いのです。家計管理についてのリテラシーが不足していることに、日本人はもっと危機感を感じるべきだといえるでしょう。

勉強は独学より「専門学校」が効率的

生徒:受験勉強は、独学でも十分なのでしょうか? それとも、専門学校の受験対策講座を受講したほうがよいのでしょうか?

 

先生:専門学校の受験対策講座は、独学に比べコストはかかりますが、無駄なく効率的に学習することができるので、忙しい会社員にはお勧めだといえます。

 

生徒:私は個別株投資に関心があるので、上場企業が開示する決算書を正しく読めるようになりたいと思っています。ファイナンシャル・プランニング技能士の勉強でも学べますか?

 

先生:個別株の投資判断のために決算書の情報を理解したい人は、会計知識に係る資格がいいでしょう。最も人気があるのは日本商工会議所の「日商簿記」です。これは、企業の日々の取引から、決算日に作成する貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作る方法を学ぶ試験です。3級であれば合格率は5割程度ですよ。

 

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起業を目指すなら「FP+中小企業診断士」がお勧め

先生:もし私が50代で転職や起業を目指すなら、どのような資格がよいでしょうか。「人生100年」ともいわれるなか、〈リスキリング〉に取り組み、長期のキャリア形成に向けて自分のスキルを磨いていくには、どうすればよいでしょうか。

 

先生:起業するなら、社会保険労務士や中小企業診断士がいいでしょう。社会保険労務士は、中小企業と顧問契約を結んで、社会保険の書類作成や申請手続きを担う資格です。中小企業診断士は、経営コンサルタントの資格です。ファイナンシャル・プランニング技能士の資格とこれらをあわせ持っていると強いです。

 

生徒:2つも資格試験を勉強するとなると、専門学校の費用の負担が重そうですね!

 

リスキリングを支援する「教育訓練給付制度」がある!

先生:リスキリングを支援する「教育訓練給付制度」を活用するといいでしょう。雇用保険に一定期間加入しているなどの条件を満たせば利用できます。受験講座を修了したあとにハローワークへ申請すると、お金がもらえます。「一般教育訓練給付」は幅広い資格が対象となっており、受講費用の20%で上限10万円です。「特定一般教育訓練給付」は、社会保険労務士や税理士など難しい資格が対象で、受講費用の40%で上限20万円です。

 

生徒:受講費用の40%というのは、少ない気がします…。

 

先生:キャリアコンサルタントや専門職大学院などが最難関の資格が対象となる、「専門実践教育訓練給付」なら、受講費用の50%、年間上限40万円が最長4年にわたって支給されます。資格取得後1年以内に就職した場合は、受講費用70%、上限56万円がもらえます!

 

生徒:十分な貯蓄がない人が開業の費用を準備するためのサポートはありますか?

 

先生:日本政策金融公庫の新規開業資金、女性・若者・シニア起業家支援関連の融資を活用することもできます。これは55歳以上も対象で、技術やノウハウに新規性が認められると、特別に低い金利が適用されます。ほかにも、返済不要のお金としては、東京都中小企業振興公社が指定するインキュベーション施設の利用などを条件に、最大300万円をもらえる助成金の制度があります。

 

生徒:それはいいですね! 私は中小企業診断士の資格取得にチャレンジしたいです。

 

先生:ぜひ頑張ってください! ただし、資格やスキルを持っていても人脈がなければ、開業は厳しいですよ。顧客が見つけにくいですから…。定年退職後の開業を目指すのであれば、50代のうちに、会社以外の人脈を広げておくことが重要ですよ。

 

生徒:ありがとうございます。資格取得と人脈の開拓、いまから頑張りたいと思います!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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