(※写真はイメージです/PIXTA)

長年、病を患っていた父親が他界。葬儀が終わったとたん、実家に寄りつかず、親の介護も一切協力しなかった兄から、「遺産を渡せ」と連絡が……。長年にわたって介護してきた側として「一銭たりとも遺産を渡したくない」という気持ちはわかります。では、「介護に協力しなかった兄弟姉妹に遺産を一切分けない」ことは法的に認められるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の代表・萩原達也弁護士が解説します。

「寄与分」を主張する方法

被相続人の介護に長年尽力したのであれば、寄与分を主張することにより、生前の貢献度に応じた遺産を受け取ることが可能です。

 

寄与分とは?

「寄与分」とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した人がいる場合に、その貢献度に応じて受け取る遺産を増やすことができる制度です。

 

たとえば、父親の介護のために長女が仕事を辞めて介護をしていたにもかかわらず、長男と同じ遺産しかもらえないのは、到底納得できないと思います。そのような場合には、寄与分を主張することで、遺産分割における不公平感を解消することができる場合があります。

 

寄与分が“認められやすい”ケース

寄与分は、相続人による行為が「特別の寄与」であったといえる必要があります。親の介護をしていたとしても、それが親子間で当然行うべき程度のものであった場合には、「特別の寄与」とまではいえません。

 

どのような場合に特別な寄与と認められるかはケース・バイ・ケースになりますが、次のようなケースでは寄与分が認められる可能性があります。

 

・親の事業や農業などを無償または低額な報酬で手伝った

・事業資金の融資を行った

・長期間親の介護や看護を無償または低額な報酬で行った

・生活費を援助して、相続財産の目減りを防いだ

・親が所有する不動産の管理を専門業者に依頼せずに行った

など

 

話し合いで解決できない場合は、「裁判手続き(調停や審判)」も視野に

寄与分をもらうには、まずは、相続人による遺産分割協議において、寄与分の主張を行い、金額を決めます。しかし、寄与分が認められれば他の相続人は、自らの取り分が減ってしまうことになるので、簡単に認めることは少ないです。

 

相続人同士の話し合いで決まらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立て、調停での話し合いで決める必要があります。ただし、調停も話し合いの手続きですので、相続人全員の合意がなければ解決はできません。その場合には、最終的に審判という手続きで、裁判官が寄与分の有無、金額、割合などを決めてくれます。

 

相続は、お金だけでなく感情が絡むので、複雑化しやすい傾向にあります。そこに、介護など長年抱えていた問題が絡むと、一筋縄では解決できないことも多いものです。

 

トラブルを抱えたときは、弁護士などに相談のうえで、相続を進めるといいでしょう。

 

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

 

萩原 達也

ベリーベスト法律事務所

代表弁護士

 

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※本記事は、公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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