(※写真はイメージです/PIXTA)

法定後見制度とは、認知症などによって判断能力がなくなったり不十分となったりした本人の代わりに、財産管理や契約などを行う「成年後見人」などを選任する制度です。似た制度として、「任意後見制度」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか? Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

「法定後見制度」を利用する際の注意点

法定後見制度を利用する際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか? 注意点は、主に次のとおりです。なお、「後見」「保佐」「補助」のうち、ここでは主に「後見」を念頭に置いて解説します。

 

定期的に費用がかかる可能性が高い

法定後見制度を利用した場合には、原則として、定期的に費用がかかります。まず、弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人として選任された場合には、後見人に対する報酬の支払いが必要です。報酬額は成年被後見人である本人の財産状況によって異なりますが、おおむね2万円から5万円であり、毎月発生します。

 

また、成年後見人に親族が選任された場合には、無報酬とすることも可能です。しかし、この場合には親族である成年後見人を監督する「後見監督人」として、弁護士や司法書士が選任されることが少なくありません。この場合の月額報酬は、おおむね1万円から2万円です。

 

いずれにしても、本人の財産から定期的に成年後見人や後見監督人の報酬が出ていく可能性があることを知っておく必要があるでしょう。なお、報酬額は家庭裁判所が決めるため、後見人などに就任した専門家が自由に報酬を決めるわけではありません。

 

候補者が必ずしも選任されるとは限らない

法定後見制度の利用を申し立てる際には、後見人に選んで欲しい人を、「候補者」として挙げることが可能です。ただし、これはあくまでも「候補者」であり、必ずしもその人が選任されるとは限りません。

 

最終的に誰を後見人とするのかは、家庭裁判所が決定します。また、希望した候補者が選任されなかったことを理由に、申し立てを取り下げることもできません。

本人の財産利用が制限される

成年後見制度を利用した場合には、本人の財産利用が大きく制限されることになります。

 

まず、本人にとって利益とならない行為は、原則として家庭裁判所の許可が下りず、行うことはできません。たとえば、本人から子どもや孫に対して贈与をすることや、子どもや孫が自宅を購入する際に成年被後見人である本人が所有する土地を担保とすることなどは、いくら家族が「本人が元気ならこのようにしたはずだ」などと主張をしても認められない可能性が高いでしょう。

 

また、たとえば「アパート建築をして相続税を下げる」などの相続税対策も、原則として行うことはできません。

 

家庭裁判所に定期的な報告が必要になる

成年後見制度を利用した場合、成年後見人に選任された者は、家庭裁判所に定期報告が必要となります。報告すべき事項は、本人の収支状況や、資産状況などです。

 

そのため、たとえ家族であっても「人のお金を預かって管理する」という意識をしっかりと持つ必要があり、本人の資産とほかの資産を混ぜることは認められません。

 

一度選任されると簡単には辞められない

成年後見人に一度選任されると、本人が死亡するか能力を回復するまで、原則として辞めることができません。

 

成年後見人を辞任するためには家庭裁判所の許可が必要であり、許可を受けるためには成年後見人の高齢や病気、遠方への転勤など、正当な事由が必要となります。

 

そのため、自らを候補者として成年後見制度の利用を申し立てる際には、十分な覚悟を持っておく必要があるでしょう。

まとめ

成年後見制度は、判断能力がなくなったり不十分となったりした者を、保護するための制度です。誰を後見人とするのかは家庭裁判所が決めるため、必ずしも申立人や本人の希望が通るとは限りません。

 

一方、任意後見制度であれば、本人と後見人候補者さえ合意すれば、任意に後見人を決めることができます。

 

そのため、現在は本人の判断能力がしっかりしており、将来のことに備えたいというご希望があるのであれば、任意後見制度の利用も検討するとよいでしょう。

 

ただし、成年後見制度や任意後見制度の利用には、さまざまな注意点が存在します。制度を誤解したまま利用して後悔することのないよう、利用にあたっては、弁護士などの専門家へあらかじめ相談することをおすすめします。

 

Authense法律事務所には、成年後見制度や任意後見制度にくわしい専門家が多数在籍しています。成年後見制度や任意後見制度の利用をご検討の際や、制度の利用にあたってトラブルが生じている際には、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

<参考文献>

※1 裁判所:後見開始

※2 裁判所:成年後見制度についてよくある質問

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所

 

 

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