「200万円の利益」を出したのに「1円も儲かっていない」と評価されてしまうのはなぜ? 知らないと怖い「“費用”と“投資”の違い」【公認会計士が解説】

「200万円の利益」を出したのに「1円も儲かっていない」と評価されてしまうのはなぜ? 知らないと怖い「“費用”と“投資”の違い」【公認会計士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

会社が「利益を出している」ということと、「儲かっている」ということは大きく異なります。その区別がわからないと、気付かないうちに損をする可能性があります。重要なのは、「費用」と「投資」の区別を明確に理解することです。『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)の著者で「IT」に精通した公認会計士である金子智朗氏が、会社の利益の最大化という見地から解説します。

キャッシュの動きと「減価償却費」の関係性

「儲かるでしょうか?」と聞かれて、みなさんはどのように考えるでしょうか?

 

そもそも、「儲かる」とはどういうことでしょうか。

 

多くの人は、「儲かるとは利益が出ること」と答えます。では、本ケースの利益をちょっと計算してみましょう。

 

最初の2年間の利益は[図表2]のようになります。

 

[図表2]1年目・2年目の利益

 

これを見ると、利益が出ています。ということは、「2年目までは儲かる」と言えるのでしょうか?

 

みなさんは、どういうときに「儲かった」と思いますか?

 

たとえば、300円で宝くじを買って、それ以上の金額が当たったようなときに「儲かった」と思うのではないでしょうか。

 

これが「儲かる」の基本です。つまり、使ったお金を上回るお金を取り戻した状態を「儲かった」と言うのです。

 

企業においても同じです。使ったキャッシュを上回るキャッシュを取り戻す場合に「儲かる」と言うのです。あくまでも、お金、キャッシュです。

 

では、あらためて本ケースをキャッシュで考えてみましょう。

 

まず、システムを購入したときに1億円のキャッシュが出ていきます。その後、売上高を得ることによってキャッシュが増加します。一方、ランニングコストはキャッシュを減少させます。

 

問題は減価償却費です。

 

減価償却費というのは、システムの取得のために既にキャッシュ・アウトした1億円を、その後何年間かにわたって費用として分割計上するものです。

 

したがって、減価償却費という費用が計上されても、キャッシュが出ていくわけではありません。キャッシュの支払いは取得時にすべて済んでいるのです。

 

ということは、このシステム導入による5年間のキャッシュの動きは[図表3]のようになります。

 

[図表3]5年間のキャッシュの動き

 

合計を見てください。5年間で取り戻す正味のキャッシュは9,800万円です。

 

1億円のキャッシュを使って9,800万円のキャッシュしか取り戻さないわけですから、このシステム導入によるサービスは儲からないということになります。

 

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管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

金子 智朗

PHP研究所

その仕事は外注すべきか、値下げすべきか、この事業から撤退すべきか。 合理的、戦略的に判断をくだす「数字で考える」トレーニング

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