(※写真はイメージです/PIXTA)

銀行は口座名義人の死亡を知ると、すぐに口座を凍結させます。これを防ぐために「亡くなったことを知らせずに預貯金を引き出しておいたほうがいい」という噂もありますが、後々トラブルのきっかけとなるためおすすめできないと、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏はいいます。そこで、口座凍結後に相続人の口座から「堂々と」預金を引き出す方法について、みていきましょう。

すぐに現金が必要な場合は「払戻制度」を活用する手も

とはいえ、亡くなった方の口座からお金を引き出さなければならないケースも存在します。こういった場合、どうしたらいいのでしょうか。

 

これまで、被相続人の預貯金は遺産分割協議を経なければ1円も払い戻しができませんでした。こうなると、葬儀代が支払えない・被相続人が負っていた債務弁済が滞るなど、緊急の費用が出せないという問題点がありました。

 

そこで、こうした状況を踏まえ、令和元(2019)年7月1日から「預貯金債権の払戻制度(民法909条の2)」が施行されています。

 

この制度は、緊急で故人の口座から捻出したい費用があった場合に相続人全員の同意がなくても、さらに家庭裁判所の判断を経ずとも払い戻しができる制度です。

 

払い戻しできる限度額は、基本的には下記の式により算出できます。

 

相続開始時点の預貯金金額×3分の1×各法定相続分

 

たとえば父・母・子ども2人の4人家族で父が亡くなり、配偶者(母)と子ども2人が相続人になったケースを考えてみましょう。この場合、法定相続分は配偶者が4分の2、子どもが4分の1ずつとなります。

 

預貯金が1,200万円あったとしましょう。先ほどの計算式に当てはめると、

 

配偶者(母):預貯金1,200万円×3分の1×4分の2=200万円
子ども:預貯金1200万円×3分の1×4分の1=100万円

 

となり、配偶者(母)は200万円、子どもは100万円を限度に引き落としをすることができるということになりそうです

 

払戻制度の注意点①限度額が「150万円」

ただし、法務省令によって債務者(金融機関)ごとに上限額は一律150万円と定められているため、配偶者(母)が実際に引き出せる上限額は200万円ではなく、150万円となります

 

払戻制度の注意点②相続放棄が不可能になる

またこの制度を利用する場合の注意点というのがもう1つあります。

 

上限が150万円と定められているのは、必要経費・平均葬儀費用・その他事情を勘案した金額とされており、この制度は「あくまで緊急用のもの」です。引き出した相続人は相続財産を受け取ったとみなされるため、相続放棄を検討していた場合は放棄できなくなってしまいます。

 

いくら緊急で葬儀費用を出さなければならないということであっても、財産の全容(借金の有無・誰が相続人か)がわからない時点でこの制度を利用することは非常に危険といえます。

 

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