(※写真はイメージです/PIXTA)

交通事故はいつ誰にでも起こりうるトラブルです。運悪く被害者になった場合、それまでの生活に支障をきたし、本当に憂鬱で辛い日々を送ることにもなりかねません。加害者側とは保険会社を通しての対応となることが一般的ですが、その対応や賠償金についてはよく分からないという方がほとんどでしょう。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、交通事故における保険会社の対応や賠償額の相場等について、古山隼也弁護士に解説していただきました。

次に、休業損害ですが、保険会社は「示談後に支払う。」としか答えていないので、通院交通費と同様に手間を嫌っただけなのか、休業の必要性や期間の長さなどに疑義があるのか、分かりません。

 

もし手間を嫌っただけで休業の必要性や期間の長さに疑義がなければ、休業損害証明書と源泉徴収票を見れば額を算定することができますので、通院交通費と同様、保険会社の対応は不適切でしょう。

 

これに対し、もし休業の必要性や期間の長さに疑義がある場合、休業損害の賠償義務がないおそれがある以上、内払いに慎重になっても仕方ありません。ただ、その場合でも、どの点に疑義があるのかユキナさんに説明して、ユキナさんが保険会社の疑義に対して説明する機会を与えるべきです。

 

以上から、保険会社の行ったユキナさんへの対応は不適切と言わざるをえません。

保険会社が内払いしないときの対策4つ

内払いは保険会社のサービスで強制的なものでない

くり返しになりますが、交通費や休業損害、慰謝料等の交通事故の賠償金は、示談成立や判決が出た後に支払われるのが原則です。そのため、交通費や休業損害等は、被害者がいったん支払って、示談成立後に回収することになります。

 

ですが、それではユキナさんのように、示談が成立して賠償金を受け取るまでの間、予想外の支出や収入減から生活が苦しくなってしまいます。

 

そこで、保険会社は示談が成立する前でも交通費や休業損害、慰謝料等の一部を内払いとして支払ってくれるのですが、これはあくまでサービスで法的な根拠をもって強制されたものではありません。

 

そのため、内払いをするかどうか、いくら内払いするか、は保険会社の任意に委ねられるため、ユキナさんのように保険会社から内払いを拒否されることもあるのです。

保険会社から内払いを拒否されたときに取りうる手段

それでは、ユキナさんのように交通費等の内払いを拒否されて生活が苦しいときに取りうる手段はあるのでしょうか。

 

考えられる方法は、以下の4つです。

① 自賠責保険に仮渡金を請求する。

② 自賠責保険に被害者請求する。

③ 裁判所に仮払い仮処分を申し立てる。

④ 自身の人身傷害保険等を利用する。

 

自賠責保険に仮渡金を請求する

自賠責保険に仮渡金を請求すれば一時金の前払いを受けることができますので、このお金を生活費に充てることが考えられます。

 

ただし、傷害を受けた場合の仮渡金は5万円~40万円で1度しか請求できないため、苦しい生活を助けるお金としては十分でないケースも多いです。

 

自賠責保険に被害者請求する

被害者自身が自賠責保険へ既に発生している交通費等を請求(被害者請求)すれば、自賠責保険から支払いを受けることができます。ただし、上限は120万円(傷害部分)で、保険会社が支払っている治療費等も含まれますので、受け取ることのできる額に限界があります。そのため、被害者請求で当座をしのぐことはできますが、過度な期待は禁物です。

 

裁判所に仮払い仮処分を申し立てる

加害者や保険会社に対して一定の支払いを仮にするよう裁判所から命じてもらう仮処分を申し立てる方法があります。これは、認められると不払いの場合に強制執行の申立てまでできる強い効果があります。

 

ただし、認められるためのハードルは高く、あまり利用されていないのが実情です。

 

自身の人身傷害保険等を利用する

もし被害者やご親族の契約している保険契約に人身傷害保険等が付帯されていれば、人身傷害保険等の保険金を請求することもできます。

 

人身傷害保険等から受け取った保険金は、保険会社に賠償金を請求する際に既払金として差し引かれるのが基本ですが、被害者に過失がある場合はその過失に相当する部分から充当されます(被害者の過失に相当する部分は差し引かれない)。そのため、被害者に過失のあるときも人身傷害保険等の利用を検討することになります。

休業損害には残業分も原則含まれる

休業損害の計算方法

給与を受け取っている方に関する休業損害の計算方法は、「基礎収入×休業日数」が原則です。

 

ユキナさんは「休業損害に残業代を盛り込めるのか。」と質問されていますので、ポイントは「基礎収入」を計算する際に残業代が含まれるかということになります。

 

給与から「基礎収入」を計算する場合、交通事故の直近3ヵ月の支給金額の平均から収入日額を算定するのが一般的です。ここでいう「支給金額」は手取り額でなく、税金や社会保険料等を控除する前の税込金額を指し、残業代や手当等も含まれます。

 

したがって、交通事故の直近3ヵ月における残業代の平均が休業損害に含まれるということになります。

 

なお、繁忙期と閑散期がある職種等、交通事故の直近3ヵ月における残業代の平均が、実際に休業していた時期に見込まれていた残業代と大きく離れている場合は、前年度やそれ以前の同時期の残業代平均から算定する方法もあります。

残業代だけを請求できるか

それでは、職場には復帰したものの症状や通院のために残業できなかった場合、残業代だけを休業損害として請求することはできるのでしょうか。

 

もともと残業代は額が変動するものですので、交通事故後に残業代が減ったと言うだけではなかなか認めてもらえません。通院のために残業できなかったことや交通事故以前から日ごろ残業していたこと等を立証する必要があります。

 

したがって、残業代だけの請求は可能であるもののハードルが高いと考えていただいてよいでしょう。

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