(※画像はイメージです/PIXTA)

足元の米ドル/円はおよそ半年ぶりに140円台をつけるなど、円安が加速しています。そのようななか、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、米ドル/円のレンジについて「円安は145円を上抜けて円安には進まないのではないか」と予想しています。その根拠とは、みていきましょう。

今月の注目点…6月中旬予定のFOMCが最大のヤマ場

米ドル/円は、1月に127円まで下落するなかで、120日MA(移動平均線)を大きく割り込みました。このような動きは、経験的には上昇トレンドはすでに終わり下落トレンドへ転換した可能性を示しています。

 

ところで、普通は少なくとも1~2年以上続く動きを「トレンド(継続的動き)」と呼ぶので、仮に2022年10月から下落トレンドに転換したなら、現在は下落トレンド展開中と考えられます。

 

そうであれば、それと逆行する米ドル/円の上昇は限定的であり、2022年10月に記録した米ドル高値更新には至らないといった見通しになります。

 

ちなみに、2000年以降で見ると下落トレンドと逆行した米ドル上昇は、120日MAを最大7%程度上回ったことはありましたが、基本は5%を大きく上回らない程度にとどまりました(図表7参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表7]米ドル/円の120日MAかい離率(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

先週末の段階で、すでに米ドル/円は120日MAを5%上回ってきたので、今回の場合はこれまで経験した一時的な米ドル/円上昇でもかなり大きな動きになっていると言えそうです。

 

ところで、トレンドの判定では、120日MAより52週MAの方がより「ダマシ」が少ないという実績がありますが、先週末の段階で、米ドル/円は52週MAを3%程度上回った動きとなっています(図表8参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表8]米ドル/円の52週MAかい離率(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

以上のように見ると、120日MAでみても52週MAでみても、今回の下落トレンドにおける一時的な米ドル/円の上昇は、経験則が示す範囲を超えそうな動きになっている可能性がありそうです。

 

これは、米利下げ予想修正に伴う米金利上昇のタイミングと重なった影響が大きいのではないでしょうか。そうであれば、過去の経験則が示す以上に一時的な米ドル/円上昇がどこまで進むかは、やはり米金利上昇が目安になるでしょう。

 

あくまで、米利下げ予想修正の範囲にとどまるなら、米2年債利回りの上昇は現行のFFレートの水準近辺、つまり最大でも5%程度まででしょうから、それを最近の米ドル/円との関係に当てはめると米ドル/円の上昇は最大でも145円に届くかどうかというところでしょう。

 

米2年債利回りがさらに上昇し、それに引っ張られて米ドル/円が145円も超えてくるためには、FFレートが6月以降も一段と引き上げられるといった見通しが出てくることが必要でしょう。

 

米政府と議会の債務上限を巡る交渉のなかで、歳出、つまり政府支出は減る見通しとなっています。それは景気にマイナスに働くため、金融政策はさらなる利上げがしにくくなることでしょう。

 

それでもインフレ対策で利上げが続くなら、いよいよ米景気後退リスクが高まるのではないでしょうか。

 

以上の点を考えると、米金利の上昇には自ずと限度があり、その意味では米ドル/円の上昇見通しにも限度があります。よって、6月の米ドル/円は中旬に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)をにらみながら、135~145円中心で米ドル高・円安が行き詰まる展開を想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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