今週の注目点=米債務上限交渉の行方に要注意
イエレン財務長官が、米債務上限の拡大を行わないと、米政府がデフォルト(債務不履行)となってしまう期限が6月1日であるとの見方を示してから、この問題への注目が徐々に高まってきました。
今週は、バイデン政権と議会共和党のこの問題を巡る交渉が本格化する見通しとなっています。
ただこの問題が難航しやすいのは、2024年の大統領選挙を控えた民主・共和両党の政治的駆け引きの対象になっているということがあるでしょう。その意味では、両党とも簡単には譲歩できないと見られます。
逆に言えば、株価急落など何らかの「危機」による後押しでもなければ、交渉を前に進めることすら難しいのではないでしょうか。
似たような構図で展開した2011年8月は、期限切れの10日前頃から株安が徐々に拡大に向かいました。
それに背中を押されたかのように、期限切れ寸前で債務上限の拡大は合意に達したのですが、直後に米国債の格下げが行われたことをきっかけに株・金利・米ドルの「トリプル暴落」が起こりました(図表3参照)。
以上のような2011年のケースを参考にすると、イエレン財務長官が期限とした6月1日まで残すところ半月程度に迫ってきたことから、徐々にこの問題のリスクを回避する動きが本格化してくる可能性には注意が必要でしょう。
それは交渉担当者達の背中を押す形となり、そこで初めて期限内での交渉決裂回避が模索されることになるのではないでしょうか。
仮に、債務上限を拡大できなければ、米政府は事実上デフォルト(債務不履行)に陥ることとなります。そうなると、米国債は暴落、利回りは暴騰となりそうですが、上述の2011年のケースでは株価が急落するなかで米国債利回りはむしろ低下に向かいました。
これを参考にすると、今回の場合も交渉決裂でデフォルト・リスクに現実味が出てくるようなら、株安・金利低下拡大の可能性が高いのではないでしょうか。これは、インフレ対策中で年内の利下げを否定しているFRBが、緊急利下げを余儀なくされる、今のところではほぼ唯一のシナリオではないでしょうか。
この債務上限問題の影響以外で、FRBの年内利下げ否定の姿勢に変わりないとすれば、政策金利を大きく下回っている米2年債利回りなどは「下がり過ぎ」の可能性が高いでしょう(図表4参照)。
ただし、この債務上限問題を受けて株安が拡大するようなら、米金利はさらなる低下の可能性もあるのではないでしょうか。
以上を踏まえると、債務上限問題への注目が一段と高まりそうな今週は、米金利の上値は重く、きっかけ次第では金利低下リスクが再燃する可能性にも要注意ではないでしょうか。
米ドル/円はそんな米金利の動向をにらみながら、132~137円中心での展開を想定したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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