(※写真はイメージです/PIXTA)

企業がSDGsの取り組みを積極的に行っていることが就職先・転職先にあたり影響するかという質問に対し、およそ8割が「影響する」と回答しました。人材採用だけではなく、ESG推進へのコミットメントが、企業の評価を左右することは間違いなさそうです。本稿では、フロンティア・マネジメント株式会社の代表取締役を務める松岡真宏氏と、同社のマネージング・ディレクターである山手剛人氏の共著『ESG格差 沈む日本とグローバル荘園の繁栄』から一部を抜粋し、企業が“収益性”だけでは評価されなくなる世界で、企業に求められる行動変容について詳しく解説します。

ESGの観点から注視され始めた「資本」の動き

資本の動きも、各企業のESG対応を注視する(人・モノ・金のうちの”金”)。

 

日本サステナブル投資フォーラムによると、2021年度末時点の「サステナブル投資」残高は、前年比65.8%増の514兆円へと急増した。

 

なお、ここで言う「サステナブル投資」とはESGのEの視点で行われる投資を指し、ESG投資に含まれる。とはいえここ最近は、ESG投資からの資金流出が生じている。

 

これを考えると、2022年度末にサステナブル投資残高がどうなっているのかは分からない。

 

ただし、少なくとも2021年度末の残高水準は、日本の年間GDP額とほぼ同等にまで膨れ上がっている。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

サステナブル投資では、ネガティブスクリーニングという手法も採用される。反ESGの産業や企業は投資対象としないように、ふるい分け(スクリーニング)が行われる。

 

化石燃料を手掛けるような企業から投資資金を引き揚げる行為を「ダイベストメント」と呼ぶ。「日本経済新聞」の記事(2022年1月5日付)によると、2021年12月末時点で、ダイベストメントを表明した年金基金は世界で1502基金となった。

 

これは5年前と比較すると2倍の水準だ。

 

ダイベストメントを表明した基金が運用する資産総額は4,600兆円と巨額だ。

 

巨額な資金は自然な流れとして、1980年代の米国の事例に見られるように、社会に対して強い発言力や影響力を獲得する。

 

ただし、米国の一部の州では、ダイベストメントを行う基金とは取引を禁じる動きも出てきている。米国における資金の動きは、ここにきてESGシンパとESGアンチで全く逆の動きが同時進行で発生しており、目が離せないことも事実だ。

 

一部で逆回転の動きが起こりつつあるとはいえ、企業が「人・モノ・金」の3つの経路で、ESG推進を迫られることに変わりはない。

 

しかも、アフォーダビリティを確保するために、ESGシンパの手法を採用することが求められるのだ。

 

 

松岡 真宏

フロンティア・マネジメント㈱

代表取締役 共同社長執行役員

 

山手 剛人

フロンティア・マネジメント㈱

マネージング・ディレクター コーポレート戦略部門 企業価値戦略部長 兼 産業調査部

 

ESG格差 沈む日本とグローバル荘園の繁栄

ESG格差 沈む日本とグローバル荘園の繁栄

松岡 真宏・山手 剛人

日経BP

お飾りのSDGsでは勝てない。混沌とする世界のサステナビリティ動向を俯瞰して見えてきた、残念な日本企業の姿――。 脱炭素(E)の追求は、エネルギー危機で迷走!ESGの焦点は、日本企業が苦手なSとGへ。 〔地球・社会によ…

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