(※画像はイメージです/PIXTA)

障がいのある子を持つ親の1番の懸念事項は、「親亡き後の子どもの生活」です。自分の死後も、我が子が安心して暮らせるようにするにはどうすれば……こうした懸念への有効策のひとつが「家族信託」の活用と、司法書士法人ソレイユ代表の杉谷範子氏はいいます。家族信託を活用することでどのようなことができるのか、仕組みとともにわかりやすく解説します。

家族信託だけでは足りない可能性も…

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なお、家族信託は財産管理の手法ですので、子どもが施設へ入所する手続きなどには対応できません。施設によっては親族が入所手続きできるところもありますが、「成年後見人をつけてください」という施設もあります。つまり、家族信託だけでは足りない可能性があります。

 

その際には、親が希望した方や団体が後見人になることができるように、事前に後見人の予約をする「任意後見契約」の制度の活用も考えられます。

 

家族信託を「民・民」とすると、任意後見は後見人を親が指定できる一方で、後見が開始すると家庭裁判所が選んだ監督人がつきますので、「半官・半民」といったところでしょうか。

 

ただし、任意後見契約は子どもが18歳で成人したあとは子ども自身が契約しなくてはならないため、困難なケースも多いと思われます。18歳未満の未成年者の場合には、親が親権を使って、子どもの代理人として任意後見契約を結ぶことができます。

 

まずは親自身が将来の子どもの後見人になれるようにしておき、その後、親の高齢化や死亡などを理由に後見人を務めることが困難になったら、次の後見人を選ぶことができる内容にすることも可能です。

 

子どもの兄弟姉妹に負担はかけられない…そんな親が持つべきひとつの考え方

親が亡くなったあと、子どもが不自由なく生活を送るためには、「子ども名義で財産を蓄えればいい」という単純なものではありません。子どもの財産を子どものために使える方の存在と仕組みが必要です。

 

「家族信託」「民事信託」は、現在の親の財産を子どものために使えるように、管理してもらう方にあらかじめ託しておく制度です。

 

「障がいのある子どもの兄弟姉妹に負担はかけられない」という方もいますが、「法定後見」によって見ず知らずの専門家に財布の紐を握られることと比較すれば、子どもの健康状態や性格、嗜好などに通じた兄弟姉妹が財産管理を行い、親の財産を子どものために使ってもらう仕組みを整えておくことも選択肢のひとつに加えていいのではないでしょうか。「財産を管理すること」と、「生活全般の面倒をみること」は別なのです。

 

なお、子どもが未成年の間であれば、親権を使った「任意後見契約」で将来の後見人を指定できます。成人の子どもの場合は、子どもが契約の内容をある程度理解できるのであれば、子ども自身で任意後見契約にトライすることも選択肢のひとつです。

 

なお、すでに子ども名義で財産がある場合には、子どものために、先に子どもの財産を使うようおすすめしています。

 

また、金銭であれば家族信託の方法のほかにも、「生命保険信託」といって、親亡き後に、子どもへ少しずつ金銭を渡す方法もあります。

 

いずれにしても、子どもの将来に向けての準備は早いに越したことはありません。この記事をひとつのきっかけに、それぞれのご家族に適した対策をとられるよう願っています。

 

 

杉谷 範子

司法書士法人ソレイユ代表/司法書士

 

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。