近年のAI技術の発展によって、以前は難しいとされていた「無人店舗」が実現され始めています。なかでも日本国内に増えつつある「無人コンビニ」について、技術面・生活面の両方から分析し、その最新事情をご紹介します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
「無人決済店舗」の躍進。ファミマやローソンなど日本大手企業の最新事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

AIが基本だが、工夫は各社それぞれ

以後、この種の店舗の名称は「無人決済店舗」で統一していきますが、共通する特徴としてまず挙げられるのが、店内に設置されたカメラの数です。例えば20平方メートル以下の比較的狭い店舗でも、天井に据え付けられたカメラ数は大体10-20台ほど。

 

店舗サイズが大きくなれば、それに応じて店内をくまなくカバーするためにカメラの台数が増えます。カメラは顧客が店内に入った瞬間から追跡をし始め、常に死角のない形でその人物の行動を把握します。

 

また、カメラは本人の位置のみならず、手の動きなども把握しており、こうした情報を基に「どの商品が手に取られたか」が判別されるのです。このカメラによる追跡映像を基に行動分析をするのが、AIの役割です。ただ、カメラ自体は天井に設置されているため、角度によっては映像分析だけでは「棚のどの段の商品を手に取ったか」の判別が難しいことがあります。

 

そこでAmazon Goでは棚に「重量センサー」を設けて、カメラによる行動追跡との対で商品の取得状況を判断するようにしています。これにより、カメラだけでは際どい部分も、重量センサーの情報を基に正確に判断できるようになっています。

 

シアトルのAmazon Go 1号店における天井の様子。カメラが所狭しと並んでいる(筆者提供)
シアトルのAmazon Go 1号店における天井の様子。カメラが所狭しと並んでいる(筆者提供)

 

これが昨今話題になっている「無人決済店舗」の基本的な仕組みです。分かれば非常にシンプルですが、高速で正確な画像解析技術が必要なこともあり、いざ実用化しようとなると難易度は高いです。

 

Amazon Goも一般に広く展開されるレベルになると処理が追いつかず、店内への入店人数は厳しく制限されていたという話も聞いています。1年間、改良に改良を加えて実用レベルにまで持ち込みましたが、もう1つの課題は「コスト」でした。

 

膨大な計算を行うためのサーバの運用費や準備費に加えて、カメラと重量センサーの機材コストもあり、初期導入費用が1店舗あたり億単位という試算もありました。こうした課題があったからこそ、フォロワーと呼ばれる同種の技術を持つ他社が、様々なかたちでこの分野に参入する余地があったともいえます。

 

例えば、日本のカインズで実験店舗を展開しているシリコンバレーのテック系スタートアップ企業AiFiは、重量センサーを用いずにカメラのみでこの仕組みを実現しています。

 

コスト削減の意味もありますが、この方式のメリットとしては商品の識別に重量センサーや棚を必要としないため、さまざまな形状やサイズ、重量の商品を自由に取り扱うことができるという点にあります。

 

カインズはホームセンターのチェーン店であるため、取り扱い商品はコンビニにあるような小物ばかりでなく、住宅設備に関する商品もあり、重量センサーなしの無人決済店舗の方が実装しやすいと考えたそうです。

 

また、Amazon Goも、同社が取り扱う「Just Walk Out」の仕組みがコスト高であることを認識しており、現在では重量センサーを用いないカメラのみの簡易で安価なシステムを開発し、外販を始めています。

 

カインズ本社のMobile Store。AiFiの技術を基にしている(筆者提供)
カインズ本社のMobile Store。AiFiの技術を基にしている(筆者提供)