「大企業の話」「談合だらけ」…入札に対する先入観
この連載を読んでいるあなたは、どんな立場の方でしょう。
ご自身で会社を経営する経営者、あるいは個人事業主。企業のなかで新規営業先を求める営業担当者。ご自分の部署や会社に提案できる新展開を模索するビジネスマン/ビジネスウーマン。どのような立場にいても、ビジネスの最前線で生き残りを賭けた熾烈な競争を、日々戦いつづけていることにかわりありません。
誰もが「新しい客先」「まだ同業他社が目をつけていない商売ネタ」「経営の主力となりうる安定したビジネス相手」を開拓しようと必死なのではないでしょうか。しかし、有力な狩り場はほぼすべて、競争相手とのテリトリー争いで埋め尽くされ、開拓できる場所はまず残されていません。
そんな厳しい競争のど真ん中で、ぽっかり口を開けて待っている真空状態の20兆円市場。それが、この連載のテーマ、「入札市場」なのです。
え? 入札?
官公庁や自治体が発注する業者を選ぶ、ときどき談合で捕まるあれ?
多くの人の印象は、その程度で終わっているかもしれません。
この本を書くにあたり、入札がテーマの出版物を調べたところ、公共工事以外の本がほとんどないことに筆者は愕然としました。年間20兆円ものビジネスになっているのに、なぜ、これまで入札に関するビジネス書が書かれなかったのでしょうか?
それは、多くの企業経営者が、「入札は大手企業や建設会社の話、中小企業は関係ない」と諦めていたからだと思います。「どうせ出来レースだろ?」「入札には談合があり、なかなか新参者が落札することはできない」という偏見も、まだまだ拭えません。
このイメージはなかなか根強く、日本人の多くはいまだに「入札」というとダムや公共工事の発注をめぐる談合のニュースを連想するようです。
これではいけないと、私はこの本を書くことを決めました。この連載では、実地経験から知った入札のメリットやデメリットをご紹介していきたいと思っています。
制度改正によって、参入ハードルは大きく下がっている
実際にはたびたびの制度改正とともに透明性は増し、入札は中小企業がより参入しやすいシステムに成熟してきています。この制度改正のなかでも、大きな転換となったポイントは二つあります。
一つは、1998年に全省庁統一資格ができたこと。
今までは、中央官公庁への納入業者になろうとしたら、入札案件を管轄する省庁それぞれに申請をして、資格審査を受けなければなりませんでした。しかし、この制度改革により一つの省庁に申請して、「全省庁統一資格」を取得すれば、すべての省庁の入札資格が得られたことになったのです。
もう一つは、2001年に電子入札の制度が始まり、日本のどこにいても、入札ができるようになったこと。これによって、今まで大手会社だけが参加していた入札のハードルが低くなりました。
それまで官公庁の指定した場所に行かなければ入札できなかったのですが、この制度ができてから入札業者は、まるでヤフオクのように、どこからでも気軽に入札できるようになったのです。
この二つの新しい制度が浸透することによって、今後、日本の中小企業において、入札は大きな脚光を浴びると確信しています。
入札によって中小企業は根底から変わっていきます。落札した仕事は官公庁の依頼なので、不払いや支払いの遅延の心配がありません。また、やり方しだいでは、毎年安定した売上げにつながる可能性もあります。
さらに、「一般入札」で落札したことで「指名入札」に変わるチャンスがあります。そうすると楽に仕事が回ってくるようになります(これについては、本文中に詳しく解説します)。こんなによいことづくめの入札を、始めない手はありません。
この本は「これから入札を始めたいあなた(御社)」に、「ぜひ、気軽に入札にチャレンジしてください」という私たちからの激励の気持ちをこめて作られました。すでに入札、落札に成功している方や企業は、さらにレベルアップする方法として、参考にしていただけたら幸いです。