悩ましい…iDeCo・企業年金の「一時金受取と年金受取どっちがお得?」 様々なポイントを検証【専門家が解説】

悩ましい…iDeCo・企業年金の「一時金受取と年金受取どっちがお得?」 様々なポイントを検証【専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代、老後資金をどうするかは重要な問題です。この問題に詳しい第一生命経済研究所主席研究員の谷内陽一氏は、著書『WPP シン・年金受給戦略』(中央経済社)において、老後資金を途切れさせない戦略として「先発」「中継ぎ」「抑え」の「WPP(継投型)モデル」を提唱します。本記事では「中継ぎ」にあたる「私的年金(Private Pensions)」のお得な「受け取り方」について解説します。

年金・一時金の選択のポイント

年金・一時金の選択のポイントは、税制上の取扱いの差異以外にもさまざまな要素があります。主要なものをまとめると[図表2]のとおりとなります。

 

[図表2]年金・一時金の選択のポイント

 

◆1. ライフプラン

ライフプランの観点からみると、年金を選択することで生活資金の計画的な取崩しが可能になります。一方、一時金を選択するメリットとしては、多額の資金ニーズへの対応が挙げられます。

 

例えば、住宅ローンの返済や子・孫への援助といった使いみちがあり、かつ他の手段による資金準備が難しい場合は、企業年金では一時金を選択するのも1つの方法ではあります。

 

◆2. 収益性

収益性の観点からみると、年金(とりわけ確定給付企業年金)の場合は制度の給付利率、一時金の場合は受取後の運用手段(金融商品等)の期待運用利回りをみて、比較検討することになります。

 

現在の確定給付企業年金の給付利率は2%台前半が主流です。かつてのように5.5%が当たり前だった時代に比べると見劣りしますが、低金利・マイナス金利環境下の現在では、相対的には魅力的な水準だと言えます。

 

確定拠出年金は、前述のとおり受取の都度手数料が発生するため、手数料負担だけを考慮すると、年金よりも一時金に軍配を上げざるを得ません。

 

◆3. 安全性・信用リスク

確定給付企業年金における年金受給は、一定の給付利率が付利されるものの、年金受給開始後に企業の経営状況が悪化すると、給付減額や制度の終了・廃止に直面するリスクがあります。

 

その点、企業型DCは掛金が従業員の個人口座に拠出された段階でその権利は従業員個人に帰属するため、企業の経営悪化等により年金資産が毀損するリスクはありません。

 

一方、一時金を選択した場合は、「受取後の資金をどう管理・運用するか」という新たな問題に直面します。

 

一時金の預金先、投資先あるいは運用委託先が万が一破綻した場合は、資産の毀損や換金・引出しに時間を要する等のトラブルに見舞われます。さらに、一時金で受け取った後に無駄遣いしてしまわないように注意する必要もあります。

 

谷内 陽一

第一生命保険株式会社・第一生命経済研究所

主席研究員

 

WPP シン・年金受給戦略

WPP シン・年金受給戦略

谷内 陽一

中央経済社

「公的年金の受取りを何歳まで繰り下げる?」人生100年時代の老後生活設計の新理論WPP(Work longer:就労延長、Private pensions:私的年金等、Public pensions:公的年金)を詳解。

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