360度に映し出された映像の中で様々な体験ができるVR(バーチャル・リアリティ:仮想現実)。エンターテインメントの領域で多く活用されてきましたが、実はビジネスでの活用も進んでいます。VRの最新技術、ビジネス事例、トレンドについてご紹介します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
買い物、旅行、物件選びも!身近で活用広がるVRの世界。今後の動向も大胆予想 (※写真はイメージです/PIXTA)

VRをビジネスに導入する意義

いまや、VR技術は教育や医療といった様々なビジネスシーンでも活用される場面が増えてきました。ビジネスでのVRの活用は新たな価値を生み出す可能性を秘めているとされていますが、実際にどのような分野・場面での活用が期待できるのでしょうか。

VR技術を活用することで、現実に近い状況を再現し、効率よく技術習得ができます。具体的には医療現場における手術、危険な状況下での作業、災害発生時の対処などです。このように現実の世界では体験することが難しいシチュエーションであっても、状況を再現して技術習得を行うことが可能です。


VRを応用すれば、開発にかかるコストを削減も実現できます。例えば、これまで工業製品や建造物などは、設計し、模型を作って検証するという工程が必要でした。ここにVRを導入することで、実際に作るよりも工程や材料調達などの手間を省くことができその分コストダウンが可能です。

また、先述したように遠隔地からの体験の共有にも活用できるので、移動する必要がなくなり、そのコストをおさえることができます。

 

導入の手間、VR酔いなどの課題も

VRを導入することで実現可能になることはたくさんありますが、実際には不具合が生じることもあります。

すでに様々な場面で導入が進んでいるとはいえ、VRはまだまだ新しい技術です。新規導入にはそれなりにコストがかかり、また技術的な問題もクリアする必要があります。

企業などの発注側に十分な理解が足りない場合、「このくらいのことはできるだろう」といった推測のもと、該当分野での通常時における作業や動作をVR技術開発の受注側に求めることがあります。しかし、実際には発注者側が求めるレベルまでの開発ができない場合もあります。

また、まれにVRの映像と感覚とのずれから、車酔いのような症状になる人がいます。そのような人にとってVRを利用することは困難なことであるといえます。

 

VRをビジネスで導入した実際の事例

では、実際にVRが導入された現場の成功事例をみていきましょう。

医療の現場では、医師が患者の診察や手術、緊急医療の現場といった様々な状況をVRで体験することができます。特にアメリカでは、VRによる仮想空間で手術のシミュレーションを行い、成功率を高める試みが進んでおり、一定の成果をあげています。

日本でも、歯科医療機器の「モリタ」が、歯科医師がVRを利用して治療を行えるシステムを開発しています。これは、カルテ情報や器具のCG情報を重ね合わせたシステムで、歯科医師が仮想空間のCG画像のガイドを見ながら、現実空間で治療を施せるというものです。

不動産業界では、VRを利用することで、わざわざ現場に行かなくても物件の見学をすることが可能となっています。

実際に株式会社リニューアルストアでは、VRで中古物件のリフォーム後の姿を体験できるサービス「MITEKURE」を運営・提供しています。

VRを利用して、模擬旅行を体験することもできます。各地の旅行をVRで体験したうえで、実際の旅行を申し込むという使い方もできるでしょう。また、病気や高齢で実際の旅行をすることが難しい方へのサービスとしても活用できます。

「エース株式会社」はwebサイトで「世界VR旅行」というコンテンツを展開しており、世界の有名観光地を体験できるサービスを提供しています。

ショッピングサイトの構築にVRを活用する企業も増えています。まるで実際の店舗にいるかのように商品を選んで購入することが可能です。

「三越伊勢丹ホールディングス」のスマートフォンアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」では、仮想空間に伊勢丹新宿店を設置しており、店内で買い物をすることができるようになっています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」では、社内研修にVRを導入しており、VRを使ってチキンの調理方法が学べます。実際の研修では約25分かかるとされる調理の習得が、VRでは10分ですむとされています。