(※写真はイメージです/PIXTA)

事業承継を検討する際、承継時にかかる多額の税金など財務面に不安を抱える経営者や後継者は少なくありません。そんなとき、事業承継を見据えて「経営者の退職金を調整する」という方法があると、相続に詳しい税理士・公認会計士の小形剛央氏はいいます。本記事では、経営者の退職金額設定のポイントや注意点について解説します。

役員退職金の「適正額」…算出方法は?

ご存じの方も多いと思いますが、役員退職金は適正金額の範囲内であれば、税務上、全額を損金に算入することができます。しかし、不相当に高額な部分の金額については損金不算入になります。

 

金額が適正か不当に高額かどうかを判断するのには、一般的に「功績倍率法」という計算式が用いられますが、功績倍率法による役員退職金の適正額の計算式は、次の通りです。

 

役員退職金の適正額

=退任前の最終報酬月額×通算役員在任年数×役位別に定める率(功績倍率)

 

この功績倍率は、以下の数字が一般的な水準とされています。

 

・社長…………3.0倍
・専務…………2.4倍
・常務…………2.2倍
・平取締役……1.8倍
・監査役………1.6倍

 

これはあくまで計算上の数値ですが、現実問題として、社長の功績倍率はどのくらいで設定されているのか。先の調査では、社長の功績倍率の平均値は2.04倍という結果が出ています。一般的な水準とされる3.0倍未満の割合は実に7割を超えるわけですね。

 

出所:エヌエヌ生命保険発表資料をもとに作成
[図表2]社長の功績倍率の平均率は? 出所:エヌエヌ生命保険発表資料をもとに作成

 

役員退職金は、経営者の引退後の生活費を支える大きな資金源となります。おそらく多くの経営者は、小規模企業共済制度や生命保険など、さまざまな方法で退職金の準備をしていることと思います。

 

これも事業承継と同様、早い段階からスタートするに越したことはなく、独断や思い込みで準備を進めるのではなく、専門家の意見を聞いて対策を考える必要があります。

 

 

小形 剛央

税理士法人小形会計事務所 所長

株式会社サウンドパートナーズ 代表

税理士・公認会計士

 

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※本連載は、小形剛央氏の著書『いきなり事業承継成功読本』(日刊現代、講談社)より一部を抜粋・再編集したものです。

いきなり事業承継成功読本

いきなり事業承継成功読本

小形 剛央

日刊現代

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