データが示す経営者の「過酷な現実」
帝国データバンクの調査によると、2022年上半期の企業倒産件数は3,045件でしたが、そのうち「不況型倒産」が2,379件で、全体の78.1%となりました。「不況型倒産」の内訳は、2,379件のうち2,330件が「販売不振(売上高が減少し利益が出ない)」です[図表3]。
会社経営において、売上を上げて利益を残すことがいかに重要かつ難しいことであるかがわかります。
この倒産企業数でいえば、2021年の倒産企業数は約6,000件と、リーマンショックが起きた2008年(1万3,000件以上)以降、倒産企業数はずっと減少しています。2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の影響で厳しい状況を支えるための各種支援策による影響も大きいと予想されますが、この原稿を書いている2022年9月時点では、歴史的な円安による物価高も社会問題となっており、決して楽観できない状況です。
これらのデータは、どんな時代であっても倒産リスクは常に付きまとっていて、なんとか経営が続けられても、経営者が得られる収入は非正規社員と同程度のケースが約半数という、起業の過酷な現実を教えてくれます。
リスクを抑えられる…「事業承継」という選択肢
しかし事業承継であれば、取引先も従業員も存在する状態からスタートできるので、後継者の精神的負担は起業よりもかなり軽減されます。
実際、「ゼロから起業するほどの勇気はないけれど、事業承継なら興味がある」と答える後継者候補にもよくお会いしますが、事業承継は、このような後継者の起業ニーズを満たす新たな選択肢となり得ることを感じています。
もちろん、経営を引き継ぐことは容易ではないですし、相応の覚悟も求められますが、それでも特に後継者不足で悩んでいる中小企業経営者の方々には、後継者候補は意外と存在するという事実をわかってほしいと考えています。
その意味でも、「経営は大変なものだから、誰も引き継がないだろう」と思い込んでしまうのは、やはりもったいないことといえます。
小形 剛央
税理士法人小形会計事務所 所長
株式会社サウンドパートナーズ 代表
税理士・公認会計士
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