相続のセカンドステップ「分割」
続いて、相続資産を誰にどのような割合で分けていくかという「分割」について考える。
相続の「分割」で揉める、2大ケース
実は、相続のなかで最も揉めるのが、この「分割」である。分割は、通常であれば「法定相続分」と呼ばれ、各相続人が受け取る権利のある割合が法律で決まっている。この通りに分割できれば何も問題はない。問題となるのは、相続資産の種類が偏っている場合や、誰かに優先的に渡したい場合である。
相続資産の種類が偏っている場合とは、不動産や所有する法人の株式に偏っている場合である。不動産や会社の株式は分散すると管理が難しくなったり、経営権がばらばらになったりする可能性があるため、相続人の誰か1人にまとめて渡したいというケースは非常に多い。
その場合、他の相続人が受け取れる資産は、わずかに残った現金のみとなってしまう事がある。そうなると、相続人間での争いの原因となりかねない。誰かに優先的に渡したい場合についても同様である。
自分の介護をよくしてくれた子に多く残したいなど、感謝の気持ちから相続の配分に傾斜をかけたいという方は意外と多い。そういった場合には、遺言書を書くことをおススメする。
遺言書があれば、遺産分割方法の指定や特定の遺産を特定の相続人に相続させるといった事が可能になる。ただし、遺言書があったとしても、相続人に最低限保障された遺産の取り分である「遺留分」については、他の相続人から請求が可能である点には注意が必要である。
相続が原因で、兄弟姉妹間の仲が悪くなってしまうというのは本当によくある話である。子どものころから仲良く育った子どもたちが、大人になって親の相続を期に不仲になってしまうのは非常に悲しいはずだ。
そのため、この分割という部分についてはしっかりと考えていく必要がある。もっと言えば、生前に相続人の間で、誰がどの資産をいくらの割合で受け取るかをお互いに握れている状態が最もベストである。
まとめ
ここまで、いくら相続税がかかり、それを払う事は可能なのかを明らかにすることと、相続財産を誰がどのように分割するのかを予め決める必要があることを紹介してきた。
相続というと、いかに相続税を抑えるかばかりに焦点が行きがちだが、まずは「納税」と「分割」の部分をしっかりと抑えておかなければならない。その後の「節税」については、手段が非常にたくさんあるため、次回の記事で詳しく解説していく。
相続はいつ発生するかは分からない。もし急遽起こってしまった際に、大切な家族が、苦しい目に合わないように、後回しにせず早いうちから考えておく必要がある。
田邉 陽吉
ファイナンシャルアドバイザー
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