家賃滞納する入居者に“張り紙”で対抗→訴えられた大家…裁判所が大家に命じた「まさかの慰謝料」【弁護士が事例紹介】

家賃滞納する入居者に“張り紙”で対抗→訴えられた大家…裁判所が大家に命じた「まさかの慰謝料」【弁護士が事例紹介】
(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸アパート・マンション大家を悩ませる問題のひとつに「家賃の未払い」があります。今回、賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた北村亮典弁護士が、家賃を踏み倒す入居者に対して「張り紙」で対抗し、入居者から訴えられてしまった大家の悲劇を紹介します。

家賃の督促方法…入居者のドアに貼り紙は許される?

【質問:賃貸マンションのオーナーから】

私の所有する賃貸マンションの賃借人から、「日照に不満がある」とのクレームがあり、その直後、1ヵ月分の賃料の支払いがありませんでした。

 

そこで、管理会社に依頼して、その賃借人に電話をかけたり部屋まで訪問してもらいましたが返答がありませんでした。

 

そのため、管理会社の人が、賃借人の部屋のドアの前に、滞納家賃を催告し期限までに支払がない場合には賃貸借契約を解除し鍵を交換する旨の貼り紙を貼り付けました。

 

その後も連絡がなかったため、その2日後に賃借人宅を訪問しましたが、やはり返答がなかったので、再度同じ内容の張り紙をしました。

 

そうしたところ、賃借人から、「この張り紙のせいで名誉を毀損された」と言われ、慰謝料請求の訴訟を起こされてしまいました。

 

ドアの前に張り紙をすることは許されなかったのでしょうか。

 

【説明】

本件は東京地裁平成26年9月11日に事例をモチーフにしたものです。

 

この事例で、裁判所は、

 

「本件貸室のドアに滞納家賃を催告し期限までに支払がない場合には賃貸借契約を解除し鍵を交換する旨の貼り紙を2回貼付したものであるが、これらは原告の名誉を毀損する内容のものであることは明らかである」

「これらの行為は、管理会社の担当者が原告に対し連絡が取れない状況にあったことを考慮してもなお、1ヵ月分の滞納賃料の督促の方法として社会通念上相当性を欠く違法なものである

 

と認定し、慰謝料として3万円の支払いを賃貸人に命じました。

 

電話や訪問をしても返答がなかったとのことなので、賃貸人側には酷のようにも思われるのですが、それで裁判所がこのような判断をした理由としては、「賃料1ヵ月分」の滞納しか生じていなかった、という点が大きいように見られます。

 

したがいまして、賃料の滞納分が大きくなれば、張り紙をする方法が許容される確率も高まっていくものと考えられます。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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