(※写真はイメージです/PIXTA)

相続トラブルはできれば避けたいもの。とはいえ、富裕層でもない限り、ドロ沼の相続争いなんて無縁だろう……と考えている人も多いでしょう。しかし、「相続争いの4分の3は“財産額5,000万円以下の家庭”で起こる」と、元税務調査官の税理士、秋山清成氏はいいます。今回、相続専門40年のベテラン税理士秋山氏が「争族」に発展しやすい6つのケースと、それぞれの解決策についてみていきましょう。

相続争いは「財産が少ない家族」で起こりやすい

私は国税局・税務署で、主に相続税を取り扱う資産課税部門で約40年、その後、相続専門の税理士として独立開業をして約7年、相続に関する仕事に50年近く携わってきました。さまざまな相続争いを見てきた私の経験から、一つ確実にいえることがあります。

 

それは“争族”というのは、財産の多い家族よりも財産の少ない家族のほうが起きやすいということです。実際に司法統計データからも、遺産分割で争いが起こる割合は、遺産額5000万円以下が全体の約4分の3を占めています。

 

そんな私の経験をもとに、私がこれまで見てきた相続争いが起きやすい家族の特徴と、相続争いが起きないために事前に取っておくべき対処法について紹介します。

“争族”が起きやすい「6つのケース」

1.主な財産が「自宅」と「少額の預金」の家族

相続争いが起きやすい特徴の一つは、意外にも亡くなった人の財産が少ない家族です。

 

主な財産が自宅と少額の預金の家族は、例えば、親と同居していた長男が自宅を相続すると、残りの兄弟姉妹は民法で定められた法定相続分をもらうことができません。長男が「家と土地は自分が相続するので、姉さんと弟は100万円ずつでいいか」と尋ね、「いいよ」と了承してくれる仲良し兄弟姉妹なら問題はありません。

 

けれども、「それでは納得できない。法定相続分をもらいたい」となると、話がこじれてしまいます。長男が長女と次男へもっと多額の現金を渡せれば争いは丸く収まりますが、長男に現金がないと、最悪の場合、長男は住み慣れた自宅を売却して現金化し、3人で分けることになります。

 

このような家族は、親が生きている間に、家族全員で話し合いをし、必要であれば、親は遺言書を作成しておくことが重要です。

 

2.相続対策を一切していない

財産のほとんどが不動産で、生前に一切の相続対策をしていない家族は、相続争いが起こる可能性が高いです。他の相続人よりも価値の低い不動産を相続する人には現金をプラスして調整したいところですが、その現金を誰も持っていません。相続人同士で不動産を共有名義にする方法もありますが、不動産を共有で持つことは、後々、トラブルのもとになります。

 

このような家族は、可能なら親の生前にいくつかの不動産を売却し、ある程度の現金を用意しておくと、家族が相続財産を巡って争うことを回避できるでしょう。

 

3.特定の人だけが多くの資金援助を受けていた

特定の人への援助とは、大学の授業料や結婚資金、自宅の購入資金の贈与などがあります。

 

例えば、長男は私立大の医学部で、次男は専門学校に通ったとすると、次男の言い分は、「兄貴は医者になるために親から高額な援助を受けた。自分と兄貴が同額の相続ではオカシイ」となり、争いに発展することがあります。

 

このような争いを回避するためには、次男に自宅の購入資金を援助するなど、できるだけ兄弟間で不平等が生まれないようにしておきましょう。平等に援助できるほどの財産がないのなら、遺言書に「長男には高額な医大の授業料を援助したので、相続財産は次男に多めに相続させる」というような内容の遺言を書いて残すとよいでしょう。

 

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※本連載は、秋山清成氏による著書『元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

秋山 清成

KADOKAWA

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