(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●今回、日銀による物価見通し引き上げと、金融緩和の副作用点検という2つの事前報道があった。
●23、24年度の物価見通しが2%近くとなればコストプッシュ型の物価高が続く理由の説明に注目。
●変動幅再拡大なら長期金利上昇、円高、株安、据え置きで緩和継続なら小幅な円安と株高か。

今回、日銀による物価見通し引き上げと、金融緩和の副作用点検という2つの事前報道があった

日銀は、1月17日、18日に金融政策決定会合を開催します。今回は、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)が公表されます。展望レポートとは、先行きの経済・物価見通しや、上振れ・下振れ要因を詳しく点検し、そのもとでの金融政策運営の考え方を整理したものであり、年4回、通常は1月、4月、7月、10月の金融政策決定会合において、公表されています。

 

今会合については、2つの事前報道がありました。1つは、日銀が展望レポートにおける消費者物価指数(CPI)の上昇率見通しを、前回の昨年10月時点から上方修正する検討に入ったとの報道で、もう1つは、日銀が今会合で大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検するとの報道です。前者は昨年末の日本経済新聞、後者は先週12日の読売新聞で報じられ、市場でも、この2点に関心が集まっています。

23、24年度の物価見通しが2%近くとなればコストプッシュ型の物価高が続く理由の説明に注目

まず、CPIの上昇率見通しについて、前回の昨年10月の展望レポートをみると、2022年度が2.9%、2023年度と2024年度は、いずれも1.6%でした(図表1、政策委員見通しの中央値、CPIは生鮮食品を除くコアCPI)。日本経済新聞によると、上方修正の水準として、2022年度を3%前後、2023年度を1.6%以上2%未満、2024年度を2%近くとする案が浮上しているとのことです。

 

(注)2022年10月28日時点の政策委員の大勢見通し。レンジは最大値と最小値を1個ずつ除いたレンジ。<>内は見通しの中央値。 (出所)日銀の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]展望レポートの物価上昇率見通し (注)2022年10月28日時点の政策委員の大勢見通し。レンジは最大値と最小値を1個ずつ除いたレンジ。
         <>内は見通しの中央値。
(出所)日銀の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

仮に、見通しがこれらの水準に上方修正された場合、2022年度については、足元の物価動向を踏まえ、実勢に沿った上方修正と解釈することができます。ただ、2023年度と2024年度の新たな見通しが2%近くとなれば、黒田日銀総裁はこれまでコストプッシュ型の物価上昇は長続きしないとしてきたため、上方修正の理由と今後の政策対応について、どのような説明があるか、注目されます。

変動幅再拡大なら長期金利上昇、円高、株安、据え置きで緩和継続なら小幅な円安と株高か

次に、副作用の点検について、報道では市場の歪みの是正に必要な場合は、追加の政策修正を行うとしています。1月11日付レポートで指摘した通り、先月20日に10年国債利回りの許容変動幅が上下0.25%から0.5%へ拡大されて以降も、イールドカーブの歪みは解消されていません。また、直近では10年国債利回りに0.5%を超える上昇圧力が生じており、日銀は連日、巨額の国債買い入れに踏み切っています(図表2)。

 

(出所)日銀の資料と各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]直近の日銀による国債買い入れ動向 (出所)日銀の資料と各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

そのため、先月と同様の理由、すなわち、金融緩和を持続的かつ円滑に進めていくための対応として、許容変動幅を再拡大することも、全く考えられない訳でなく、その場合は一段の長期金利上昇、円高、株安の反応が予想されます。ただ、市場では今回、政策据え置きの見方が大半であり、日銀が政策を据え置き、緩和維持の姿勢を強く示せば、一時的に小幅な円安と株高の動きが想定されます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2023年1月「日銀金融政策決定会合」プレビュー【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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