本記事は、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社の『マーケット情報』を転載したものです。

投資家が取り得るアクションとは

投資家が取り得るアクションは、(少なくとも)3つあります。

 

まず1つ目は、単に排出量を削減するだけではなく、気候変動への適応策、すなわちグラスゴー気候協定が定義する「気候変動の影響をすでに受けている人々を支援する」ことに取り組むことです。

 

2つ目は、リスクを抱える人々のために設計された金融および保険プロダクトの改善を推進することです。

 

そして3点目は、コミュニティからのフィードバックを通じてそのインパクトを測定する方法についても改善していくことです。

 

気候変動適応戦略への投資

まず最初に、何兆ドルに及ぶと推計される民間の新規投資資金が気候変動適応に向けられない限り、今世紀半ばまでにネットゼロを達成することはできないでしょう。

 

先進国は、エマージング国を支援するために毎年1,000億ドルを気候変動ファイナンスの形で動員することが求められていますが、その資金を効果的に展開するためには、投資家は、公正な移行と気候変動対応の公正さの両方をより幅広く推進するエマージング投資の実例を必要としています。

 

合計4兆4千億ドルを運用する開発系および主要なアセット・オーナーや運用者が創設メンバーとして参加する団体であるインパクト・インベスティング・インスティテュートの新しいイニシアチブである「Just Transition Finance Challenge(公正な移行のためのファイナンスにおける課題)」は、こうした必要な事例を生み出すことで、気候変動対応への資金フローをサポートすることを目指しています。

 

これまで投資家は、排出量削減による気候変動の緩和(Climate Mitigation)を主眼としてきましたが、2021年の国連気候変動会議(COP26)では、気候変動適応(Climate Adaptation)に向けた一歩を踏み出しました。会議の参加者は、エマージング国への気候変動資金配分の総額の50%を気候変動適応に戦略的に振り分けることとし、その大部分を気候変動に対して脆弱な国々に割り当てることを決定しました。

 

年間の気候変動適応にかかる費用は、2030年にはエマージング国で3,000億ドルに達する可能性があり、一見すると、COP26の配分は実行可能でシンプルな投資のように見えます。

 

しかし、最新の利用可能なデータによると、すべての国において、気候変動適応への経済的な支援は、気候変動緩和に比べてはるかに低いままです。気候変動の影響を最も受ける人々の備えを強化するなど、気候変動適応に向けた活動の加速は不可欠であり、イノベーションはこの活動の成功のための重要な要素になります。

 

「気候保険市場の創出」がもたらす効果

革新的な気候変動適応戦略は、気候変動に強い作物や新しい灌漑システムの開発など、さまざまな形で実現することができます。私たちが注力する効果的な戦略のひとつに、新たな気候保険市場の創出があります。

 

エマージング市場に特化したインパクト投資は、零細・中小企業や低所得世帯を対象に、異常気象をカバーするカスタマイズした気候変動保険へのアクセスを提供します。多くの零細農家にとって、保険の対象となる作物や家畜が唯一の家計収入源であるため、保険は生計と回復力の鍵を握っているのです。気候変動適応戦略は、現在、多くの気候変動ファイナンスのうちのひとつの柱となっています。

 

次ページ気候変動保険を通じて低所得者層を気候変動から守る

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