(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●中国では、ゼロコロナ政策に対する市民の不満が高まり、主要都市で抗議が広がる異例の事態に。

●現行のゼロコロナ政策下での感染拡大はセンチメントを悪化させ、経済成長の押し下げにつながる。

●当局はゼロコロナ政策の調整を明言、市場は進展を見守ることに、引き続き中国リスクは要注意。

中国では、ゼロコロナ政策に対する市民の不満が高まり、主要都市で抗議が広がる異例の事態に

中国ではこのところ、再び新型コロナウイルスの感染が拡大しています。中国国家衛生健康委員会の11月28日の発表によると、国内の新型コロナウイルス新規感染者は、11月27日に5日連続で最多記録を更新したことが確認されました。中国では、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策が継続されているため、感染再拡大に伴い、ロックダウン(都市封鎖)や移動制限の対象も増加しています。

 

こうした状況のなか、中国の主要都市では先週末、ゼロコロナ政策への抗議が広がりました。中国国家衛生健康委員会は11月11日に、入国者の隔離期間短縮など、コロナ政策の緩和を発表していましたが、地方レベルで実現できておらず、市民の強い不満につながっている模様です。中国では、共産党のもとで厳しい言論統制が敷かれるため、党や政府への抗議活動が、複数都市で一斉に行われることは、異例の事態といえます。

現行のゼロコロナ政策下での感染拡大はセンチメントを悪化させ、経済成長の押し下げにつながる

中国のコロナ感染再拡大とゼロコロナ政策を巡る混乱は、中国経済や金融市場にとって、警戒を要する材料です。弊社は中国の実質GDP成長率について、2022年は前年比+2.9%、2023年は同+4.4%を予想しています。既存の減税などの景気対策で、経済は緩やかに持ち直すものの、ゼロコロナ政策と不動産問題(住宅引き渡し遅延に抗議する住宅購入者のローン返済停止でローンの不良債権化が懸念される問題)で、成長ペースは抑制されるとみています。

 

弊社ではこの先、ゼロコロナ政策は過度な防疫措置の是正が徐々に行われ、不動産問題は、法整備や不動産業界への流動性支援が必要になると考えています。従って、現時点でのゼロコロナ政策では、今回のようにコロナの感染が再拡大すると、当然ながら防疫措置は強化されるため、センチメント(市場心理)は悪化し、弊社の予想成長率を押し下げる要因となります。

当局はゼロコロナ政策の調整を明言、市場は進展を見守ることに、引き続き中国リスクは要注意

中国でロックダウンが強化されれば、中国進出企業が工場の操業を停止するなどの思惑から、中国関連株の下落につながりやすく、また、中国経済の成長ペースが鈍化するとの見方が強まれば、中国株の下落や、原油などの商品価格の下落につながりやすいと考えられます。実際、コロナの感染が再拡大し、抗議活動が広がるまでの期間、市場の動きをみると、おおむね想定された反応が確認されます(図表1)。

 

[図表1]中国コロナ感染再拡大を受けた市場の反応

 

なお、中国国家衛生健康委員会は11月29日、ゼロコロナ政策は常に調整を続けるとし、当局者は過剰な規制を避ける必要があると述べましたが、全面見直しの考えは示されませんでした。市場はこの先、コロナ政策を巡る当局の動きを見守ることになると思われます。なお、本日発表された中国の11月購買担当者景気指数(PMI)は、悪化傾向が確認されました(図表2)。引き続き中国リスクには注意が必要と考えています。

 

[図表2]中国の購買担当者景気指数(PMI)

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国の「ゼロコロナ政策」を巡る動きと市場への影響を考察する【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

 

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