経営の足を引っ張る「長期在庫・不良在庫」の処分方法

前回は、回収不能に陥った「不良債権」を早期に処理する方法を説明しました。今回は、経営の足を引っ張る「長期在庫・不良在庫」の処分方法を見ていきます。

長期在庫の処分や評価損を計上し、前向きな経営を実現

経営者にとっては、投資をして製造、あるいは仕入れた在庫を捨てることは、気持ちの上でもなかなか難しいものです。ですから処分していないにもかかわらず、廃棄したように見せかける脱税が後を絶たないのでしょう。

 

不良債権の処理と同じく、長期在庫や不良在庫などは思い切って適正化し、前向きな経営を目指してください。

 

●在庫の廃棄

 

売れない在庫を長期にわたって抱えると、保管する場所が必要となるうえコストがかさみます。したがって、節税では思い切って廃棄処分にするのが最善策です。たとえば帳簿価額100万円の在庫を廃棄すれば「廃棄損」として100万円を損金計上することができます。

 

とはいえ、わずかでも売れているのであれば、すべて廃棄処分にしてしまうのは、やはり心苦しい部分もあるでしょう。仮に年に1〜2個ほど売れる商品が100個残っているのであれば、そのうち90個を廃棄するなど独自のルールを決めて対処するというのもひとつの方法です。

 

なお、債権同様、在庫を廃棄する際は「証明書」を必ず保存しておいてください。単に在庫を廃棄するだけで廃棄損を計上できるわけではありません。たとえば在庫の引取業者から「廃棄証明書」を発行してもらうなどして廃棄処分の記録を残しておくのです。

 

●評価損の計上

 

どうしても廃棄が難しい場合、業種によっては「評価損」の計上を検討します。評価損とは、商品の取得価額より時価が低い場合の差額のことです。たとえば商品が劣化する可能性がある貴金属業者や、流行り廃りの激しいファッション関連業者などの場合、評価損の計上も可能でしょう。

評価損の計上には、税務署に根拠を示す必要あり

評価損を損金計上する際、税務署から「適正な時価」の根拠を問われます。国税庁によると、適正な時価とは「当該事業年度終了の時においてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額」とされています。

 

つまり、「いま売却する場合、いくらであれば売れるのか」を正当に算出する必要があるわけです。

 

たとえば宝石店では、経年により変色した商品を通常の価格で販売することはできません。この場合、評価損の処理をする商品一つひとつに対して、時価とその根拠を写真つきで記録に残していきます。

 

宝石店はプロですから、変色した商品を業者に売ればいくらの値が付くかは判断できます。加えて、業界のルールや市場価格の平均などがわかる資料があれば添付し、それらによって時価を決定していくのです。

 

評価損を証明するのは大変な面もありますが、税務署がそれを否認しようとした場合、今度はその否認の根拠が必要となります。適正な時価の根拠を用意しておけば、否認されることはほとんどありません。

本連載は、2016年8月2日刊行の書籍『税務署が咎めない「究極の節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

連載元・国税調査官が語る「究極の節税」

みのり税理士法人 所長税理士

昭和24年生まれ。大阪国税局管内主要税務署で32年間勤務し、中小企業約800社の法人税の調査に従事。平成12年に税理士登録。平成14年、高知工科大学大学院起業家コース修士課程修了。平成15年、協同組合トータル・サポート・ブレインズ大阪を設立、代表理事就任。平成18年、みのり税理士法人を設立、代表社員・所長就任。平成19年、高知工科大学大学院起業家コース客員教授就任。ACミラン所属・サッカー日本代表本田圭佑選手のプロモーション会社の税務顧問や税理士法人以外に5企業の代表取締役も務める。
平成23年、一般社団法人全国環境対策機構(JEO)を設立し、理事長就任。児童養護施設にソーラーパネルやLEDを寄贈している。

著者紹介

税務署が咎めない 「究極の節税」

税務署が咎めない 「究極の節税」

辻 正夫

幻冬舎メディアコンサルティング

「せっかく稼いだお金を税金に持っていかれてたまるか!」そんな思いから多くの経営者が節税に励んでいます。しかし、ひとたび節税の方法を間違えると税務署から捜査の手が入り、経営が楽になるどころか危機的な状況に陥り、最…

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