税金 節税
連載元・国税調査官が語る「究極の節税」【第3回】

潤沢なキャッシュで「好条件の融資」を引き出す財務戦略

融資黒字倒産

潤沢なキャッシュで「好条件の融資」を引き出す財務戦略

前回は、究極の節税対策の第一歩となる「現金の残し方」を説明しました。今回は、現金を残すことで引き出せる「好条件の融資」について見ていきます。

財務基盤の強化で「与信力」を高める

何のためにキャッシュを残す必要があるのかといえば、それは財務基盤を強くし、金融機関の与信力を高めるためです。

 

実業家の稲森和夫氏が著書『稲森和夫の実学』(日本経済新聞社/2000年)で、キャッシュベース経営(現金に基づいた経営)の重要視を強調されているように、キャッシュが潤沢にある会社ほど「強い」のです。

 

企業間取引を例に見ると、その意味が理解できます。業種業態を問わず、一般的な企業間取引では売上の回収よりも仕入れなどの支出が先行する傾向にあります。

 

たとえば製造業の場合、先行投資で材料を仕入れたうえで人件費をかけて製造し、出来上がった商品を売り掛けで販売します。帳簿上では利益は計上されますが、売上の回収は後回しになるため実際の現預金は減っていきます。

 

この状態で売上をさらに伸ばそうとすれば、支出はますます先行する一方、回収はどんどん後回しになり、手元の現預金が減り続けることになります。場合によっては、売上は増えたけれど、支払いのための現金がいよいよ足りなくなるという事態に陥ることも考えられるでしょう。

 

こうした状況で、運悪く取引先が倒産し、売掛金が回収できなくなるとどうなるか。会社にキャッシュが潤沢にあれば持ちこたえられますが、なければ黒字倒産も現実味を帯びてきます。

 

現在は経済のグローバル化によって、世界各地の不況が日本にも瞬時に影響を及ぼす時代です。2008年のリーマンショック時は、製造業の多くがワークシェアリング(労働の時間短縮)に追い込まれました。なかには、売上が7割や8割も落ち込んだ企業もあったほどです。そうした有事でも財務的に強い会社になるためには、何よりキャッシュが必要なのです。

 

キャッシュがあるからこそ給料の遅配も避けることができますし、仕入先への支払いも遅らせずに済みます。

 

このように、会社のキャッシュが増え、財務基盤が強くなると、金融機関の与信力が高まります。与信とは金融機関が企業に融資枠を付与することで、文字どおり「信用を与える」という意味です。会社の資産のなかでも現預金が増えると、金融機関からの信用が高くなり、場合によっては無担保で融資を受けることも可能になります。

 

もともと財務的な体力が脆弱な中小企業は金融機関を味方につけて、好条件の融資を引き出すことが経営の舵取りのポイントです。

好条件で得た融資を「新たな事業投資」に振り向ける

会社にキャッシュが豊富にあれば、さまざまな投資へ振り向けることができます。「現状維持は衰退の始まり」というように、会社を継続・発展させるためには相応の投資を継続しなければなりません。

 

先ほどの「投資」と「リターン」の関係を思い出してください。キャッシュに余裕があることで新たな投資が可能となるのです。

 

ただし中小企業の場合、自己資本だけに頼った経営では積極的な事業投資は難しいですし、いざという時に持ちこたえることができません。したがって、会社にプールしているキャッシュとともに、好条件の融資を新たな事業投資に振り向けるのです。

本連載は、2016年8月2日刊行の書籍『税務署が咎めない「究極の節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

辻 正夫

みのり税理士法人 所長税理士

昭和24年生まれ。大阪国税局管内主要税務署で32年間勤務し、中小企業約800社の法人税の調査に従事。平成12年に税理士登録。平成14年、高知工科大学大学院起業家コース修士課程修了。平成15年、協同組合トータル・サポート・ブレインズ大阪を設立、代表理事就任。平成18年、みのり税理士法人を設立、代表社員・所長就任。平成19年、高知工科大学大学院起業家コース客員教授就任。ACミラン所属・サッカー日本代表本田圭佑選手のプロモーション会社の税務顧問や税理士法人以外に5企業の代表取締役も務める。
平成23年、一般社団法人全国環境対策機構(JEO)を設立し、理事長就任。児童養護施設にソーラーパネルやLEDを寄贈している。

著者紹介

連載元・国税調査官が語る「究極の節税」

税務署が咎めない「究極の節税」

税務署が咎めない「究極の節税」

辻 正夫

幻冬舎メディアコンサルティング

「せっかく稼いだお金を税金に持っていかれてたまるか!」そんな思いから多くの経営者が節税に励んでいます。しかし、ひとたび節税の方法を間違えると税務署から捜査の手が入り、経営が楽になるどころか危機的な状況に陥り、最…

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