◆2. 会社に対する責任
第二に、会社に対する責任です。取締役は会社に対し、以下のような責任を負っています。
・善管注意義務・忠実義務(会社法330条・355条):会社の利益を第一に考えなければならない
・競業避止義務(会社法356条):原則として会社と同じ事業をしてはならない
・利益相反避止義務(会社法356条):原則として会社と取引してはならない
これらに違反した場合に、会社から責任を問われることがあります。
なお、善管注意義務・忠実義務には、自分自身がきちんと会社のために働くことだけでなく、他の役員が変なことをしないよう監視する「相互監督義務」も含まれます。
株主総会や取締役会の決議に基づいて会社が訴えてくることもありますが、それよりも件数が多いのはむしろ、「株主代表訴訟」(会社法847条)です。これは、株主1名でも提起することができます。
保険加入前の行為に関する損害賠償請求もカバー
役員賠償責任保険で特徴的なのが、保険加入前の行為に関して損害賠償責任を追及された場合をもカバーすることです。多くの場合、10年前の行為まで遡って補償対象となります。
これは、他の保険にはない役員賠償責任保険に特有の補償です。
将来不安が増大し、先行き不透明ななか、今後、経営者にとって難しい経営判断を迫られる場面が増大することが予想されます。その結果として個人責任を問われるリスクを、完全に回避するのは困難です。役員賠償責任保険は、そのようなリスクに備える有効な手段の一つだといえます。