(※画像はイメージです/PIXTA)

相続税における「配偶者の税額軽減」。配偶者の生活等を配慮した制度ですが、活用にあたってはいくつか注意すべき点があります。そこで「配偶者の税額軽減」仕組みや適用要件、活用の際の注意点について、税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏が解説します。

配偶者の税額軽減…申告期限までに遺産が未分割の場合

相続人同士の話し合いがまとまらず、申告期限までに遺産分割が確定しない時には「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税の申告書とともに税務署に提出します。その後、遺産分割協議が成立した際に、配偶者の税額軽減を適用して相続税額を計算し直し、更正の請求(過大に納めた税金の払戻を受ける手続き)または修正申告(追加で納税をする手続き)を行うこととなります。

 

なお「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しても、様々な事情により3年以内に遺産分割が終わらない時には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署に提出し、分割までの期間を再延長することができます。

特殊な状況における配偶者の税額軽減の考え方

①配偶者が相続放棄をした場合⇒配偶者の税額軽減の適用が可能

相続に関する権利を一切放棄するのが相続放棄であり、放棄をした方はプラスの遺産もマイナスの遺産も受け継ぐことはありません。

 

ただ、妻が相続放棄をしていても夫の死亡保険金の受取人となっていれば、保険金を受取ることができます。死亡保険金は民法上では受取人固有の財産であり、相続財産とは別の扱いとなるためです。受取った保険金について相続税の課税が発生する場合には、配偶者の税額軽減を適用して相続税の計算をすることができます。

 

<生命保険金の非課税枠>

妻と子ども2人が相続人となったときの生命保険金の非課税枠の計算

 

500万円×法定相続人の数*2(3人)=1,500万円

 

*2:相続の放棄があった場合は、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数です。
法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

※相続放棄があっても生命保険金の非課税枠の計算自体は変わりませんが、相続放棄をした妻は相続人でなくなるため、この規定の適用を受けることはできません。

 

②数次相続が発生した場合⇒配偶者の税額軽減の適用が可能

夫が死亡し妻と子ども2人が相続人となった後、遺産分割が確定しないうちに妻が死亡して次の相続が起こってしまうことを数次相続といいます。この数次相続においても、子ども2人が夫(父)の遺産の分割方法を確定させ、申告期限までに申告をすることにより妻(母)の配偶者の税額軽減を受けることができます。

 

数次相続においては、夫(父)の一次相続と、妻(母)の二次相続の遺産分割を2人の子どもが行うことになります。分割の方法によって「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」など適用できる規定が異なってきますので、一次相続及び二次相続の両方の相続税額を考慮した上で、遺産分割を行う必要があるでしょう。

 

なお、一人っ子家庭の両親に数次相続が発生し、その子ども1人以外に相続人がいない場合には、遺産分割協議自体ができないため、先に死亡した夫(父)の遺産を、妻(母)と子どもがそれぞれ法定相続分1/2ずつ相続したものとして相続税を計算することとなります。

配偶者の税額軽減…まとめ

配偶者の税額軽減は、その申告における相続税額を大きく減額することができる制度ですが、一次相続において親が遺産を相続し過ぎたことにより、二次相続で子どもが高額な相続税を負担してしまう可能性もでてきます。

 

制度の適用にあたっては、二次相続の際のリスクを最大限に抑えるようにバランスをとることも重要でしょう。

 

 

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