(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の父を亡くし、悲しみに暮れるひとりっ子の長女のもとに突然、父方の叔父が訪れました。叔父はいたわりの言葉どころか、祖父の時代の相続に文句をつけ、父の遺産を分割するよう激しく迫ります。恐ろしさにおびえる長女ですが、果たして〈祖父の相続時のトラブル〉に対応する必要はあるのでしょうか。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

30年前の遺産分割協議書が残っているかどうか

相続は前の世代から次の世代に財産を承継していく手続なので、先祖代々受け継がれてきた土地が対象となることは多いです。それとともに、前の世代からのトラブルも引き継いでしまうということがあります。

 

今回のケースは、祖父である一郎さんの相続の際の不満や揉め事をその当事者である太一さんが亡くなったあとに、娘の花子さんに、主張しているものです。

 

本件では、一郎さんの相続の際に、太一さん相続分2分の1、健二さんの相続分2分の1でした。

 

しかし、現在は、対象となる土地は、一郎さんから太一さんに相続登記がされており、すべて太一さん名義となっていることから、遺言があったか、遺産分割協議書を交わしたかのいずれかで登記名義を変更したことが考えられます。

 

したがって、当時の遺言書や遺産分割協議書が残っていれば、それを見せて、遺言か遺産分割協議書により登記をしたことを証明すればよいのですが、30年も前の話では残っていないのが普通です。

 

登記をしてくれた司法書士も、資料を保管してくれているかはわかりませんし、そもそもその司法書士がいまも司法書士をしているかもわかりません。

 

法務局に登記申請書の添付書類を閲覧することも考えられます。

 

しかし、現在は土地の登記の添付書類は50年保管されていますが、平成20年7月22日より前の登記の添付書類の保管期間は10年でした。

 

したがって、いまから30年前の相続登記の添付書類を法務局で閲覧することはできません。

 

では「30年前の相続の際に遺言書があった」あるいは「遺産分割協議書を交わした」と証明できないときはどうすればよいでしょうか。

 

相続登記がなされているということは、法務局が遺言書、あるいは遺産分割協議書を確認して登記をしています。そして、遺産分割協議書には印鑑証明書を添付する必要があります。

相続登記がなされていることが「解決ずみ」の証明に

したがって、相続登記がなされていることから、少なくとも遺言書あるいは遺産分割協議書等があったことは明らかで、一郎さんの遺産分割はすでに解決ずみなので、遺産分割をこれからする必要はないということとなります。

 

すなわち、土地の2分の1を渡す必要もないし、土地を売って代金の2分の1を渡す必要もありません。

 

もちろん、代償金として土地の2分の1に相当する金額を支払う必要もありません。

 

したがって、選択肢①②③は誤りとなります。

 

よって、「花子さんは、土地の2分の1を渡したり、売った代金の2分の1を渡したりする必要はない」とする選択肢④が正解となります。

 

ただし、花子さんが自分で叔父さんである健二さんに伝えたとしても、叔父さんは納得しないでしょうし、年齢が上である叔父さんにはいいにくい、ということもあると思います。そのような場合は弁護士に依頼し、叔父さんの要求には応じる必要がなく、応じるつもりはない旨の回答書を出してもらったほうがよいと思います。

 

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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