ウクライナ侵攻の目的として、ロシアはウクライナの「非ナチス化」を掲げています。日本では「ロシアの主張は言いがかりだ」と決めつける人も少なくありませんが、事実として、第二次世界大戦中のウクライナは、民族主義者「ステパン・バンデラ」を支持し、ナチスと連携した過去があったと、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏はいいます。プーチンが執拗に「ネオナチ」と非難するウクライナの歴史について、みていきましょう。

戦争の目的を「非ナチス化」と主張するロシア

2月24日にロシアがウクライナに侵攻したあと、プーチン大統領、ラブロフ外務大臣らの政治家、ロシアのマスメディアは「ナツィスティ」(ナチス主義者)、「ネオナチスティ」(ネオナチ)、「ナアツィオナリスティ」(民族排外主義者)という言葉でウクライナのゼレンスキー政権を非難した。

 

ロシアは、ウクライナの民族主義者ステパン・バンデラとその系統の武装集団が、ナチス・ドイツと連携してウクライナ独立を図った事実に焦点を当てる。そして「バンデローフツィ」(バンデラ主義者)=「ナツィスティ」(ナチス主義者)という図式をつくっている。

 

ロシアは今回の戦争の目的を「非ナチス化」と主張する。日本では「ウクライナの政権内部にナチス支持者がいるというロシアの主張は言いがかりだ」と決めつけるが、バンデラを英雄視する人々がウクライナ政権内部にも国内にも存在することは事実だ。

 

第2次世界大戦中、ソ連赤軍に加わったウクライナ人が200万人いるのに対して、ナチス・ドイツ軍に加わったウクライナ人は30万人もいた。日本の自衛隊に匹敵するくらいのウクライナ人が、ナチス・ドイツ側について戦ったのだ。この問題の解釈は非常に難しい。どの点と線を結ぶかによって、全然別の物語が紡ぎ出される。

 

今回の戦争で、ロシアがウクライナに対して非道な蛮行を働いているのは間違いない。無辜のウクライナ人をたくさん殺していることは、紛れもない事実だ。しかし、ウクライナもロシア人に対して同様のことをやっている。その根っこの部分には、反ソ連(ロシア)の活動に邁進したバンデラ主義者の問題があるのだ。

 

佐藤 優
作家・元外務省主任分析官・同志社大学神学部客員教授

 

 

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※本記事は、佐藤優氏の著書『プーチンの野望』(潮新書)から一部を抜粋し、GGO編集部にて再編集したものです。

プーチンの野望

プーチンの野望

佐藤 優

潮出版社

ロシアとウクライナの歴史、宗教、地政学、さらには外務官僚時代、若き日のプーチンに出会った著者だからこそ論及できるプーチンの内在的論理から、ウクライナ戦争勃発の理由を読み解き、停戦への道筋を示す。 〈戦争の興奮…

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