なかなか給料が上がらない日本の就労者たち。自分以外の懐事情も気になるところです。しかし、統計データの集計方法や、税金の課税方法を正しく理解しないと、実情はなかなか見えてきません。初心者にもわかりやすく、FPが平易に解説します。※本連載は、頼藤太希氏・高山一恵氏の共著『1日1分読むだけで身につくお金大全100 読みやすい大型判 (JK MOOK)』(自由国民社)より一部を抜粋・再編集したものです。

みんな、どれくらいお金を貯めているの?

金融広報中央委員会が、単身世帯と二人以上世帯の金融資産保有額(貯蓄額)を年代別にまとめたのが下記の図表1,2です。平均と今の貯蓄額を比べると、平均より少ない人のほうが多いのではないでしょうか。

 

しかし、平均は金額の合計を人数で割った金額ですから、一部のお金持ちが大きく引き上げてしまいます。そのため、実態に即していない金額になりがちです。

 

そこで、全体の真ん中の人が貯めている金額となる「中央値」をみると、平均とはずいぶん差があることがわかります。貯蓄の実態は、中央値のほうが近いでしょう。ただし、中央値も貯蓄ゼロの人が多いと少なくなりますので、分布図で確認することが大事です。

 

わかっていただきたいのは、どの年代にも貯蓄1000万円以上の世帯がある一方で、貯蓄ゼロの世帯もあるということ。お金を貯められない人がいる一方で、貯められている人もいるという実態です。つまり、年収の多少は関係なく、お金は貯められるということです。

 

いつまでにいくら必要かを把握し、お金を確実に貯める仕組みを構築すれば、誰もがお金を貯められるようになります。

 

★貯蓄の「平均」と「中央値」は大違い

単身世帯:どの世代もおおむね30〜40%は貯蓄ゼロだが、1,000万円貯められている人もいる(図表1)。

 

二人以上世帯:単身世帯よりは貯蓄ゼロの割合が少ない。年代が上がるほど貯蓄の多い世帯が多い(図表2)。

 

[図表1]貯蓄の「平均」と「中央値」は大違い(単身世帯)
[図表1]貯蓄の「平均」と「中央値」(単身世帯)

 

[図表2]貯蓄の「平均」と「中央値」は大違い(二人以上世帯)
[図表2]貯蓄の「平均」と「中央値」(二人以上世帯)

給与は上がりにくいうえ、手取りを増やすのは大変…

日本人の平均給与は433万円。多いと思われるでしょうか。それとも少ないでしょうか。世界的に不況に陥った2008年の「リーマン・ショック」によって405万円まで下がった2009年よりはいくらか増えています。

 

しかし、2020年になっても、平均給与の額はまだ2000年の水準を回復していないことがわかります。ちなみに、男性の平均給与は532万円、女性の平均は293万円です。また、正規雇用者の平均は495万円、非正規雇用者の平均は176万円。平均給与には、男女差や雇用形態の差もあるのです。

 

しかも、仮に給与が2倍になっても、手取りは2倍になりません。下は年収300〜2000万円まで、年収が10万円増えるごとの手取り額を示したグラフです。年収が上がるごとにとくに所得税が大きく増えます。所得税の税率は「累進課税」といって、所得に応じて5〜45%まで、段階的に増えるためです。

 

つまり、給与は上がりにくいうえ、上がっても税金や社会保険料が高くなるため、手取りを増やすのは難しいのが日本の現状です。

 

★平均給与と手取り額の現状

平均給与:2000年時点での平均給与は461万円。2009年にはリーマン・ショックの影響で急落。いまだに2000年の水準まで回復していない(図表3)。

 

[図表3]平均給与の推移(2000〜2020年)
[図表3]平均給与の推移(2000〜2020年)

 

手取り額:年収が高くなるほど所得税の負担が大きい(図表4)。

 

[図表4]年収300〜2,000万円までの手取り額の推移 ※所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみで試算しています。
[図表4]年収300〜2,000万円までの手取り額の推移
※所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみで試算しています。

 

 

頼藤 太希
株式会社 Money & You 代表

高山 一恵
株式会社 Money & You 取締役

1日1分読むだけで身につくお金大全100 読みやすい大型判(JK MOOK)

1日1分読むだけで身につくお金大全100 読みやすい大型判(JK MOOK)

頼藤 太希,高山 一恵

自由国民社

忙しい人も、お金のことがわからなくて不安な人も、1日1分読めば、お金の知識がしっかりと身につきます。 「守り方」「増やし方」「保険」「つみたてNISA」「クレジットカード」「スマホ決済」「貯金」「電子マネー」「iDeC…

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