(※写真はイメージです/PIXTA)

現在の担当医とは別の医療機関の医師に“第二の意見”を求める「セカンドオピニオン」。欧米では普及している一方で、国内の実施率は低水準にとどまっています。その背景には、患者側の気遣いや遠慮がありました。ところが歯科医師の金子泰英氏(医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長)は、セカンドオピニオンを受けることに大賛成だといいます。患者が知らない、医師の意外な本音を見ていきましょう。

セカンドオピニオンの全国平均実施率はたったの6.6%

セカンドオピニオンとは、診療を受けている担当医とは別の医療機関の医師に「第2の意見」を求めることです。患者が納得のいく治療法を選択できるよう、複数の医師の見解を聞くことであり、担当医を替えたり、転院することとは異なります。

 

また、セカンドオピニオンは自由診療に当たり、健康保険が適用されません。

 

セカンドオピニオンを受けることで、異なる治療法を知って選択の幅が広がったり、病気に対する理解が進むというメリットがあります。特にがんなどの命に関わる病気では、治療法に慎重になるため、セカンドオピニオンを求める人も増えてきています。

 

しかし、セカンドオピニオンの全国平均実施率は6.6%というデータもあり、セカンドオピニオンに消極的な医療機関も少なくありません。本来は、どんな病気であっても、医師の判断に納得がいかなければ、患者はセカンドオピニオンを受ける権利があります。

 

「かかりつけ医にはただの風邪だと言われたが、どうもおかしい」と思ったら、他の医師のセカンドオピニオンを受けてもいいのです。かかりつけ医も、セカンドオピニオンを受けた医師も同じ診断内容であれば、納得することができ、安心できるはずです。

 

[図表1]全国47都道府県セカンドオピニオン実施率ランキング

 

[図表2]セカンドオピニオンの認知度

主治医に気を遣う必要はない

よく誤解されているのは、「セカンドオピニオンを受けたいと伝えると、担当医が気を悪くするのでは?」「セカンドオピニオンを受けたら、担当医に戻りづらいのでは」といった点です。しかし、最善の治療法を患者と担当医との間で判断するために、別の医師の意見を聞くことが、本来のセカンドオピニオンです。セカンドオピニオンを受けることを担当医が理解してくれないのであれば、それは信頼関係が構築されていないということになります。

 

私は、患者が治療法に納得されていない場合、「セカンドオピニオンを受けてみてはどうですか」と自ら提案しています。ほかの歯科医も同じ診断であれば、患者も安心して治療に臨めるので、治療への理解を深めるためにも、セカンドオピニオンを活用してもらいたいと考えています。

セカンドオピニオンで、納得できない治療から命を守る

私は患者に病状や治療内容を伝えるとき、なるべく分かりやすい言葉を使うことを意識しています。自由診療なので、話をする時間をたっぷり取れるということもあり、患者からの質問にも丁寧に答えています。

 

しかし、保険診療の病院で、一人の患者に対して診察時間が長く取れない場合、患者がよく理解できていないまま、病状や治療内容の説明が終わってしまうことがあります。

 

私の義母の例を挙げます。義母は大きな病院で動脈瘤が見つかったことがありました。

 

そのときの担当医は、態度が横柄で、説明内容も専門用語が多かったため、理解できなかった義母は困ってしまいました。そこで担当医に、「私は素人で判断ができないので、今度、歯科医をしている義理の息子を連れてきます」と話したところ、イヤな顔をされたそうなのですが、後日、私が同伴して診察に行くことになりました。すると、その担当は義母だけのときとは態度がころっと変わって、説明の仕方も丁寧になったのです。

 

患者によって態度を変えるというだけでもう信頼ができませんが、説明内容もまったく腑に落ちないものでした。病状とリスクの説明はあっても、手術をすればいいのか、経過観察すればいいのか、医師の意見がなく、あいまいだったため、患者はどうしていいか分かりません。責任を取りたくないという医師の態度に驚き、さすがに「この医師はダメだ」と判断しました。

 

そのため義母が「セカンドオピニオンに行きたいので、紹介状を書いてください」と伝えると、「どこに行っても診断は同じだと思います」と言われました。それでも紹介状を書いてもらい、別の病院でセカンドオピニオンを受けたところ、「これで手術をしないのはおかしい。難しい手術ではない」という判断をされたため、転院して手術を受けることになりました。

 

その後の経過も良好ですし、病院を変えて本当によかったと思っています。

 

このときは、私が同行して、ダメな医師であることが分かりましたが、知識が少ない患者だと医師の言いなりで、「セカンドオピニオンに行っても同じなんだ」と判断し、経過観察で放置して、あとで命を落としていた可能性もあるわけです。医師にもさまざまなタイプの人がいますので、納得がいかないときは「セカンドオピニオンを行ってみたい」と伝えて、自分の命を守ってもらいたいと思います。

 

[図表3]セカンドオピニオンの流れ

医療従事者と一緒にセカンドオピニオンへ行くのもアリ

さきほどの義母のセカンドオピニオンでは私が同行しましたが、せっかくセカンドオピニオンを活用しても、医師の専門的な話が理解できないと、治療法の選択や決断が難しくなります。そういった事態を避けるため、セカンドオピニオンに医療従事者を同伴させることは問題ありません。医師側もより専門的な話をしやすくなりますし、今後、付き添いの医療コンサルタントのようなサービスは増えていくのではないかと思います。

 

特に高齢になると、耳が遠くなったり、理解力が衰えたりして、「医師の言っていることが分からない」「医師に言われたことが覚えられない」というケースが増えます。そういう医師の言葉を分かりやすく翻訳してくれる存在がいれば、心強いはずです。もちろん家族の方が付き添っても構いません。周りのサポートも得ながら、より良い治療法を選択してください。

 

 

金子 泰英

医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長

 

 

予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

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金子 泰英

幻冬舎メディアコンサルティング

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