家裁「面倒だから解任してしまえ」100人規模の大量解任劇。2012年から狂い始めた「後見制度の真相」  

家裁「面倒だから解任してしまえ」100人規模の大量解任劇。2012年から狂い始めた「後見制度の真相」  
(画像はイメージです/PIXTA)

成年後見制度の第一人者、宮内康二氏著書『成年後見制度の落とし穴』(青志社)より抜粋転載。本書では、後見制度の衝撃実例とともに具体的解決策をわかりやすく解説している。弁護士・福祉家の堀田力氏、経済評論家の山崎元氏も推薦する話題の一冊。

なぜ親族後見人は、家庭裁判所から追い出されたのか

2012年を境に親族を後見人にしなくなったばかりか、全国の家庭裁判所は親族後見人を無理やり外すという考えられないことをしました。

 

例えば、2014年、山形県で100人規模の親族後見人の大量解任がありました。ある障害者施設に入所しているお子さんの親御さんが大量に後見人をしていたところ、施設から、冷暖房機を入れ替えるための費用負担を求められた親御さんは、冷暖房の恩恵を受けるのは入所している被後見人であることから、良かれと思ってお子さんたちのお金で費用を支払ったそうです。

 

家庭裁判所はそれを後見人による横領とみなし大量解任となったと、地元の専門職後見人に聞きました。裁判所だけでは手が足りず、解任調査に担がれたその専門職後見人は、「あれで横領なら私だって横領になる」とこぼすほど強硬な解任ラッシュだったようです。

 

山形県に限らず家庭裁判所は、2012年以降、親族後見人より、専門職後見人のほうが良いという雰囲気を全国的に創り上げていきました。しかし、すべては、後見の主役である被後見人のためでもなく、またすべての親族後見人が悪いわけでもなかったのです。

解任総数5282件。一気に起こった解任ラッシュ

◉2010年から2016年にかけ、大量の後見人が辞めたり解任されています。
◉2010年から2016年にかけ、大量の後見人が辞めたり解任されています。

 

図は、全国の、後見人等の辞任と解任の推移です。福山判決の2012年から数値が上昇し、その後落ち着いています。

 

解任は、棒グラフ(数字は左軸)です。山形での大量解任劇があった2014年がピークです。解任は、横領に相当する場合がほとんどです。その年に全国の後見人が一斉に逮捕されるようなことをしたわけではないでしょう。福山判決を受け、放置していた案件を精査したところ多少の問題があり、指導も面倒だから解任してしまえという乱暴な処分が同時多発的に行われたのではないかと考えられます。

 

ちなみに、2000年から2020年までの解任件数の総数は5282件です。同期間の利用総数は52万6,268人につき約1%が解任、つまり、1%の確率で横領などが起きていたといえます。裁判所の選任責任というより、判断能力が不十分な人の財産を護るためにある成年後見制度という公器の中での犯罪は卑怯極まりなく、一般の業務上横領罪より重く処分すべきと思います。

 

上図から、解任ラッシュに2年ほど遅れて辞任(折れ線グラフ、数字は右軸)が増えて解任は減っています。これは、親族後見人の調査のためにつけた弁護士等後見人の任務完了に伴う辞任、親族後見人に対し辞めるよう勧告したことでの辞任、後見制度支援信託の設定完了に伴う弁護士・税理士・司法書士後見人の辞任、のいずれかといえます。このほか、少額の横領の場合、返金後、辞任するケースも少なからず確認できています。

 

辞任は、教科書的には後見人等の体調不良や廃業とされますが、はたしてそれだけでしょうか。ちなみに、2000年から2020年までの辞任件数の総数は7万1,973人につき、制度全体の利用総数に対し約14%(被後見人等7~8名に一人)が辞任してきたことになります。 

本連載は、2022年7月8日発売の書籍『成年後見制度の落とし穴』(青志社)から抜粋したものです。その後の制度改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

成年後見制度の落とし穴

成年後見制度の落とし穴

宮内 康二

青志社

「弁護士、司法書士などの後見人と、家庭裁判所などの行政へ! 現状の改善と向上に向け告発する! 」 いま社会問題となっている成年後見制度について、衝撃実例と実用集をあげてわかりやすく解説。自分の老後と親亡きあとの気が…

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