(※写真はイメージです/PIXTA)

ジョー・バイデン米大統領は、米情報機関に対して、新型コロナの起源に関する「情報の収集・分析」を行い、2021年8月末までに報告することを求めていた。「バイデン報告書」には何が書かれていたのでしょうか。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

「海鮮市場」から感染が広がった可能性

■新型コロナをめぐる最新の有力な研究と論戦の結論

▶マイケル・ウォロビー氏の見解

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)紙が新型コロナの起源について報じた記事について以下説明する。

 

ウイルスの起源に関する研究で定評のあるアリゾナ大学の進化生物学者マイケル・ウォロビー氏は、「新型コロナウイルスについて、WIVではなく武漢市の『武漢華南海鮮卸売市場(以下、海鮮市場)』から感染が広がった可能性が非常に高い」との見方を示した。

 

同氏は、初期の感染事例に関するデータや報道などを見直した調査結果を2021年11月18日、学術誌『サイエンス』で公表した。なお、ウォロビー氏は1918年に発生したインフルエンザ(スペインかぜ)のパンデミックやエイズウイルス(HIV)の起源に関する手掛かりを突き止めたことで有名である。

 

ウォロビー氏は、〈2019年12月時点で最初に感染が確認された事例の多くが、同市場の勤務者か訪問者、市場関係者との接触者、海鮮市場の近隣住民だった。〉と述べている。

 

最初に感染したとみられていた男性は実際のところは初期には感染しておらず、のちの市中感染が広がっていた時期に感染していたことがわかった。これまでのコロナ起源をめぐる調査では、その男性が海鮮市場を訪問していなかったため、海鮮市場を起源とする感染について疑問が投げかけられていた。

 

ウォロビー氏は今回、〈流行初期のデータなどを再構築した結果、初期の感染者は海鮮市場と何らかの関係があったことが示された。〉と述べている。同氏は論文のなかで、〈海鮮市場に足を運び、発症した人の大半は、コロナウイルスの宿主となるタヌキが生きたまま販売されていた売り場を訪れていた。〉と指摘。これは〈野生動物が生きたまま販売される海鮮市場がパンデミックの発生源であるとの強力な証拠を提供している。〉との見方を示した。

 

同氏は〈もはや海鮮市場とのつながりを否定することはできない。〉とも述べている。

 

ウイルス学者ら専門家の大半は、「武漢の研究所から流出した可能性は否定できない」としながらも、「自然発生した可能性のほうがはるかに高い」との見方を示している。

 

最近の研究結果からは、「コロナウイルスがコウモリから他の動物へと伝染したあと、遺伝子の構成に重大な変化が生じ、ヒトへの感染が可能になったとみられる」ことが明らかになっている。ウォロビー氏は、〈武漢市内の病院で医師が診察した初期患者19人のうち、10人は海鮮市場で勤務していたか、そこを訪れていた。〉と述べている。

 

先述のように12月8日に罹患した会計士の男性は、最初の感染例とされるが、実際には新型コロナではなく歯の病気で容体が悪化していたことが明らかになった。コロナの症状を発症したのは12月16日だったという。そのうえでウォロビー氏は、この男性は海鮮市場を訪れておらず、市中感染した可能性があるとの見方を示している。

 

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本連載は渡部悦和氏の著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本はすでに戦時下にある

日本はすでに戦時下にある

渡部 悦和

ワニブックス

中国、ロシア、北朝鮮といった民主主義陣営の国家と対立する独愛的な国家に囲まれる日本の安全保障をめぐる状況は、かつてないほどに厳しいものになっている。 そして、日本人が平和だと思っている今この時点でも、この国では…

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