「失われた2ヵ月」からの消費回復なるか
「4月と5月は給料ゼロでした……」
旧知の中国人美容師が力なく笑う。上海のロックダウン(都市封鎖)に伴い、実店舗の営業がことごとく不可能になった2ヵ月間。ネットスーパーなどでお金は動いたが、リアル消費は大きなダメージを受けた。この爪痕は深く、そして大きい。
上海の社会消費品小売総額は、3月は前年同月比18.9%減、4月は同48.3%減、5月は同36.5%減と大きく落ち込んだ。都市封鎖が本格化する前の3月でさえ2割近くの減少で、同月の飲食・宿泊分野も同39.5%減。消費への影響は早くから出ていた。
大きくは報じられないが、地方の中小都市でも封鎖措置が頻繁に起きている。ゼロコロナ政策により、新規感染者が1人でも発見されれば街や市全体で移動規制・外出禁止などの措置となる。
ネガティブなイメージを考慮しているのだろうか、最近は「ロックダウン」という言葉ではなく「静態管理」という用語が用いられることが多い。実態は家から出られない隔離封鎖生活なので、中身に変わりはない。
北京は全市的なロックダウンは免れたとはいえ、通りや区などエリアを絞った「ブロックダウン」が行われている。5月には各施設での店内飲食が禁止され、同月の飲食消費は1年前の半分以下になった。
全国の小売額に占める規模では、上海は4.1%、北京は3.4%で、計7.5%(21年)。特別に大きな値ではないが、現実にはこの2大都市がくしゃみをしただけで全体が病に罹ってしまう。
両市の小売統計が2桁減になった4月、中国の小売売上高は前年同月比11.1%減となった。5月も同6.7%減と振るわない。6月以降に規制緩和が進み、足元の小売統計は早晩回復してくるだろう。
ただ、20年1月から4月にかけて都市封鎖を経験した武漢は、通年の小売が前年比20%減だった。これに倣いやや悲観的に見ると、上海の22年小売はトントン程度にとどまるだろうか。昨年は反動増で13.5%伸びたが、今年は「失われた2カ月」の影響が大きくなりそうだ。
上海では6月29日からほぼ全域でレストランや食堂での店内飲食が可能になる(6月27日時点)。人数制限や1時間半という微妙な時間規制はあるものの、ほぼ3ヵ月ぶりの「外食解禁」はグッドニュース。もっとも、当面は家飲みに慣れた心と身体のリハビリが必要になりそうだ。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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