(※写真はイメージです/PIXTA)

スイスの国際経営開発研究所(IMD)によると、世界主要各国のデジタル競争力ランキングで、日本は全64ヵ国中28位と評価されています(2021年)。しかし、日本ではいま、「実物不動産投資」の業界でデジタル化が急速に進んでいるのです。これにより、誰もがスマホひとつで不動産に投資できるようになると、Hash DasH株式会社取締役の三好美佐子氏はいいます。デジタル×不動産で可能となる新たな資産防衛術とは……詳しくみていきましょう。

需要はあるが…日本でデジタル証券が広まらないワケ

これら6本の不動産デジタル証券はすべて証券会社で販売され、完売しています。

 

日頃は高リスク商品を扱うことが多い証券会社のラインナップのなかで、収益のメドがはっきり示されることや、安定性の高さなどが投資家から好感されている模様です。

 

しかしながら、改正された金融商品取引法の施行から2年、ややペースが遅いようにも感じます。これには、外的な課題と業界的な課題があると思われます。

 

外的な課題…「ブロックチェーン」に対する理解が進んでいない

外的な課題は、「ブロックチェーン」に対する一般的な理解の問題です。ブロックチェーン技術は従来のシステム技術と比べても安全性に劣るものではありませんが、暗号資産やNFTで起きた価格の乱高下や運営者の不正による事件・事故など、ブロックチェーン技術の本質でない点からよくないイメージを持たれることが多いようです。

 

また、実際にはオンライン証券で株式を売買する動作とほとんど変わらないリテラシーで取引ができますが、未経験の方も多く「難しいのではないか」との印象もハードルになるでしょう。

 

内的な課題…インフラの整備が進んでいない

業界的な課題としては、未整備部分がまだ残っている取引システムと税制の点です。

 

本来、投資家から投資家へ容易に不動産持ち分を譲渡できることがブロックチェーンの利点ではありますが、譲渡価格はどうするか(REITのように需給に任せるのか、不動産らしく鑑定評価額に基づいた価格を使うのか)、取引頻度はどうするかなど取引インフラ構築に向けて日本STO協会を中心に検討中です。

 

そのため、現在は、売却したい投資家から証券会社が一旦買い取って購入したい投資家に転売する、その時には鑑定評価額をベースとした価格を使う形が主流です。

 

また、税制についてもまだ明確に記載された条文がなく、雑所得であったり有価証券税制を適用したりスキームによって異なる説明がなされています。このような点が、投資家にもご案内しにくいところが証券業界の悩みでもあります。

 

ただ、取引インフラは大手企業が2023年~2024年には整備すると発表しているほか、税制の立法も有価証券税制を適用する方向でワーキンググループが進められています。

「不動産×デジタル」で資産防衛の幅が広がる

インフラの整備がまだ途上であるといっても、スマートフォンやパソコンの画面でボタンをタップ、クリックすることで購入・売却ができることは特筆すべき利便性の向上につながっています。

 

また、その小口化された持ち分を証券会社が管理することのメリットとして、相続時の分割が容易であることや少ない口数から生前贈与ができることなど、富裕層ならではのストレスの解消にも役立ちます。

 

さらに、金融庁の監督下で、営業者が倒産しても物件の所有に影響をおよぼさない「倒産隔離」や、信託会社が資産を管理する「信託受益権化」が必ず行われることになっています。

 

加えて、運用状況を厳格に開示することが義務付けられ、株式同様に「有価証券報告書」をつねにインターネットで確認することができます。それに付随して、第三者からの監視ともいえる「会計監査」や「鑑定」が定期的に入ります。

 

このような制度は、まとまった金額の資産を運用する富裕層には不可欠な安全弁として機能すると考えられます。

 

安定収益を生み出しながらインフレにも強い投資対象である「不動産」を容易に購入・売却できるのが不動産デジタル証券ですが、その取扱いの利便性のみならず、運営の健全性を維持するための仕組みを有していることで、今後、資産防衛手段の新たな選択肢として普及していくでしょう。

 

 

三好 美佐子

Hash DasH株式会社

取締役

 

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