(写真はイメージです/PIXTA)

社会において、我々は職場や家庭など日々大小あらゆる規模で会議を行います。国際規模で代表的なものは国連です。目下、ロシアがウクライナの原子力発電所に攻撃したことを受けて国連安保理が緊急会合をひらくなど、国際問題について話し合い方向性を定める重要な機会となっています。今回はニッセイ基礎研究所の篠原拓也氏が、そんな国連安保理がどのように議決を行っているかについて解説します。

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    常任理事国と非常任理事国の投票力を数字で表すと…

    それでは、この指数を使って、国連安保理の常任理事国と非常任理事国の投票力をそれぞれ計算してみよう。まず、15ヵ国が投票する投票順の数は、15の階乗(15!)=1,307,674,368,000通りとなる。

     

    つぎに、常任理事国のうち、アメリカが投票した時点で、議案が成立する投票順の数を計算してみる。アメリカが投票したときに議案が成立する条件は、他の4つの常任理事国(イギリス、フランス、ロシア、中国)と、非常任理事国のうち4ヵ国以上が投票を終えていることである。そこで、このような条件を満たす投票順はどれだけあるのか、計算してみると、256,657,766,400通りとなる[①]。

     

    ①アメリカが投票したときに議案が成立するような条件を満たす投票順の数について


    安保理の議決は、15ヵ国のうち9ヵ国以上が賛成した場合に可決・成立となる。このため、アメリカの投票順は、9番目以降である必要がある。また、他の4つの常任理事国(イギリス、フランス、ロシア、中国)がアメリカの前に投票を終えていることも必要となる。

     

    アメリカが9番目に投票した段階で議案が成立するような投票順がいくつあるか、考えてみよう。

     

    それには、アメリカの前に投票する8ヵ国の中に、他の4つの常任理事国がすべて含まれていることが必要だ。これは、言い換えると、アメリカの前に投票する8ヵ国の中に、非常任理事国が4ヵ国含まれているということでもある。非常任理事国10ヵ国の中から、アメリカの前に投票する4ヵ国を選ぶ。この組み合わせは、全部で210通りとなる。

     

    アメリカの前に投票する8ヵ国の投票順は8の階乗(8!)=40,320通り。アメリカの後に投票する6ヵ国の投票順は6の階乗(6!)=720通り。そこで、この3つの数を掛け算して、6,096,384,000通りとなる。

     

    同様に、アメリカが10番目に投票して議案が成立するような投票順は、252通り、362,880通り、120通り、の3つの数を掛け算して、10,973,491,200通り。

     

    11番目に投票して議案が成立するような投票順は、210通り、3,628,800通り、24通り、の3つの数を掛け算して、18,289,152,000通り。

     

    12番目に投票して議案が成立するような投票順は、120通り、39,916,800通り、6通り、の3つの数を掛け算して、28,740,096,000通り。

     

    13番目に投票して議案が成立するような投票順は、45通り、479,001,600通り、2通り、の3つの数を掛け算して、43,110,144,000通り。

     

    14番目に投票して議案が成立するような投票順は、10通り、6,227,020,800通り、1通り、の3つの数を掛け算して、62,270,208,000通り。

     

    15番目に投票して議案が成立するような投票順は、1通り、87,178,291,200通り、1通り、の3つの数を掛け算して、87,178,291,200通り。

     

    こうして算出された、9番目から15番目の投票順の数を、すべて足し算すると、256,657,766,400通りとなる。

     

    つまり、アメリカのパワーは、256,657,766,400/1,307,674,368,000となる。これは、約分すると、421/2,145となり、0.19627という値になる。

     

    他の常任理事国も同じパワーを持つから、常任理事国全体では、約0.98135(≒0.19627×5)。非常任理事国は、全部合わせても残りの0.01865(=1-0.98135)のパワーに過ぎない。非常任理事国のうちの1ヵ国は、さらにその10分の1で、0.001865となる[②]。

     

    ②非常任理事国のパワーを直接計算で求める場合について

     

    本記事では、非常任理事国のパワーを、全体(1)から常任理事国のパワーの合計を引き算して求めている。これを、直接求めてみよう。

     

    非常任理事国のうちの1ヵ国について考える。この国が投票した段階で議案が成立するような投票順は、いくつあるだろうか。

     

    それには、この国の前に、5つの常任理事国がすべて投票を終えていて、かつ、この国が9番目の投票をすることが必要だ。これは、言い換えると、この国の前に投票する8ヵ国の中に、非常任理事国が3ヵ国含まれているということでもある。

     

    この国を除いた残りの非常任理事国9ヵ国の中から、この国の前に投票する3ヵ国を選ぶ。この組み合わせは、全部で84通りとなる。この国の前に投票する8ヵ国の投票順は8の階乗(8!)=40,320通り。この国の後に投票する6ヵ国の投票順は6の階乗(6!)=720通り。そこで、この3つの数を掛け算して、2,438,553,600通りとなる。

     

    これを、15ヵ国が投票する投票順の数(15の階乗(15!)=1,307,674,368,000通り)で割り算する。その結果、この国のパワーは、2,438,553,600/1,307,674,368,000となる。これは、約分すると、4/2,145となり、0.001865という値になる。

     

    つまり、常任理事国のパワー0.19627に対して、非常任理事国のパワーは0.001865となる。常任理事国は、非常任理事国の約105倍のパワーを持っていることになる。拒否権には、ものすごいパワーがあることが数字で表されたわけだ。

     

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    次ページ拒否権が発動されても、他の14カ国の賛成で再可決・成立できるよう、議決方法を変更したら…

    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年3月1日に公開したレポートを転載したものです。

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