【3】現場社員を巻き込み動かしていく
課題抽出とストーリーづくりと合わせて大切なのは、解決に向けて社員が主体的に取り組む筋書きにすることです。そのためには、分かりやすさと取り組みやすさが重要です。
そこで最初に解決すべき課題の設定は、簡単に改善できるところから始めてもらうように計画を立てます。
業績向上というエンディングに向けて、現場のどこから手を付けていくか、ということです。実際の現場では、本当に小さなことができていない事実に遭遇する機会が少なくありません。
例えば、営業部門の幹部社員なのに営業戦略を立てることができない。「じゃあ、営業活動のスケジュールくらいは立てよう」といっても、それさえうまく組み立てることができない。これも実際にあった話です。
それでも、何をいつまでにといった細かな指示を与えたり、フォーマットを渡したりすると、期待したレベルのものが出来上がってきます。営業スケジュールができれば、その内容をもとに営業活動を進めていくことができます。
中小企業のさらなる成長を阻害している要因とは、こうした小さな問題の集積です。
個々の問題を1本の糸に例えるならば、いくつもの糸が複雑に絡み合っているのが成長の踊り場で起こっていることです。だからこそ、それらを丁寧に解きほぐし、最適な形に収めていくことが必要とされているのです。そしてすべての糸に対して、同じ作業を丹念に繰り返していく必要があります。
こうした方法こそが「人に触れる」コンサルティングの根幹をなしているといってまちがいありません。だからこそ、現状での個々のレベルにしたがって、接し方やサポートの仕方を変えていく必要があります。山本五十六の教えのとおり、まずは自らがやってみせ、できないようなら口で説明して、それでもダメなら任せる仕事のレベルを下げていく。それでできたときにはしっかりと褒める。基本的には、小さな子どもを教育するのと同じスタンスだといえます。
いきなり社員を成長させようとするのではなく、まずは今のままでも解決できるレベルに仕事のほうを切り分けていくことが重要です。社員の成長を考えるのはそれからでも遅くはありません。というよりも、細分化した仕事を確実に解決できたことが成功体験となり、そうした体験を積み重ねていくことによって、社員は自然と成長していくことができます。
状況を見ながら任せる仕事のレベルを少しずつ上げていくことによって、社員の「できる」範囲がどんどん広がっていきます。目指すべき大きな成果とは、こうした積み重ねの先にしかないのです。このような成長サイクルを実現するためには、社員との信頼関係が必要になってきます。だからこそ、ハンズオン型コンサルティングは現場に深く入り込み、「人に触れる」ことを何より大切にしているわけです。
信頼関係を構築するタイミングは、正しい現状分析のために行うヒアリング時です。個々の社員の話にしっかりと耳を傾け、ひとまずはすべてを受け止め、自分(コンサルタント)という人間を信頼してもらうことを中心に社員との面談を行います。
株式会社ココチカ
代表取締役社長 山中 一浩
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