(※写真はイメージです/PIXTA)

20世紀で最も偉大な投資家と評された米国の投資家、ジョン・テンプルトンには「強気相場は、悲観のなかに生まれ…」という有名な格言があります。ひるがえって、このところの日本の株式市場をこの格言に照合すると、どのような解釈・予想ができるのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が、格言を読み解きながら解説します。

「…幸福のなかで消えていく」

やがて景気は絶好調となり、人々は経済の先行きに自信を深め、株価の先行きに楽観的となり、投資家は幸福感に包まれるかもしれません。

 

しかし、景気のピークでは、稼働率の上限になるので生産と売り上げが増やせない一方で、仕入れコストも労働コストも上昇します。借入金利も上昇するでしょう。したがって、企業収益は頭打ちとなります。

 

加えて、インフレ懸念から日銀が金融の引き締めを始めるでしょう。金融緩和が株価の上昇要因であったのと逆で、金融の引き締めは株価の下落要因となりかねないわけです。

 

需給面でも、人々が楽観的となっているタイミングでは、買いたい人は皆が買い終わっているので、新しい買い注文が残っていない、といったこともあるのかもしれませんね。

 

というわけで、強気相場は幸福のなかで消えていく、ということになるのでしょう。

「インフレ→金融引き締め」との懸念が売り注文に?

では、今次局面をどう考えればよいでしょうか。今次局面においては景気のボトムのときから金融緩和を唯一の材料として株価が高騰を続けて来ました。景気が回復を初めてからも、株価は上昇を続けました。

 

というよりも正確にいえば、いい経済指標が出れば景気回復を期待して株価が上がり、悪い経済指標が出れば金融緩和の持続を期待して株価が上がる、といったことが起きていたわけです。

 

ところが年初から株価は大きく下がりました。世界的なインフレ懸念が原因だとされています。正確には、インフレが金融引き締めを招くという懸念が売り注文につながっているようです。

 

投資家が「景気拡大による健全なインフレは気にならない」と考えるようになって下落が一時的なものに終われば、株価は今後も上昇を続けるかもしれません。景気が絶好調といえるようになるまで拡大が続き、株価上昇が楽観のうちに成熟し、幸福のうちに消えていく、という可能性もあるでしょう。

 

しかし、そこまでいく前に投資家が「資源価格高騰や物流の滞りなどによる悪いインフレが金融引き締めを招いて相場が終わってしまう」と考える可能性もありますね。というわけで、今次局面がテンプルトンのいう強気相場に当たるのか否かは、現時点では何ともいえないでしょうね。

 

今回は、以上ですが、当然ながら投資は自己責任でお願いします。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義

経済評論家

 

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