(※写真はイメージです/PIXTA)

ビジネスマンなら「監査役」という言葉を耳にしたことがあると思います。では、いったいどのような立場にあり、どのような役割を担っているか説明できるでしょうか。「監査役」という立場やその職務内容、責任を問われる場面等について、日本橋中央法律事務所の山口明弁護士が法的目線から平易に解説します。

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監査役の「職務」と「調査権限」とは?

監査役の職務は、取締役の職務執行の監査と監査報告の作成です。監査には「業務監査」と「会計監査」があるのですが、業務監査は、取締役の職務執行が法律や定款を遵守しているかどうか監査します(適法性監査ともいいます)。ここでは、監査役がどのようにして業務監査を遂行するのか、また、問題があると判断する基準はどこにあるのか、法的見地から解説していきたいと思います。

 

株式会社の監査役は、会社に対して、

 

委任の本旨に従って善良なる管理者の注意をもってその職務を行う義務を負う(会社法330条、民法644条)

 

そして、

 

監査役は、取締役の職務の執行を監査する(会社法381条1項)

 

と、規定されています。そしてまた、

 

当該監査を行うために、監査役には、事業の報告を求め、又は業務及び財産の状況を調査することができる

 

とされています(同条2項)。

 

このことから監査役は、「どのような場合」に「調査権限を行使」して「調査を行う義務がある」と解されるのかが問題になります。

調査権限を行使し、積極的に調査を行うべき状況とは?

この点について、大阪高裁平成26年2月27日判決は、

 

「監査役は、取締役が違法な業務執行を行っていることに疑いを抱かせる事実を知った場合は、調査権限を行使して違法な業務執行行為の存否につき積極的に調査すべき義務があると解されるが、そのような事実、すなわち調査の端緒となるべき事実もないのに、違法な業務執行の存否について積極的に調査すべき義務があるものとは認めがたい」

 

と判示しています。

 

「取締役が違法な業務執行を行っていることに疑いを抱かせる事情を知った場合には、調査権限を行使して違法な業務執行行為の存否につき積極的に調査すべき義務がある。仮に上記事情を知らなかったとしても、監査役の責任が肯定されるためには、少なくとも、調査の端緒となるべき上記事情が存在し、かつ、監査役がこれを知り得る場合であることが必要である」

 

とした裁判例(東京地裁平成28年7月14日判決)や、

 

「監査役としての任務を懈怠(けたい)したというためには…取締役が善管注意義務に違反する行為等をした、又は、するおそれがあるとの具体的な事情があり、相手方がその事情を認識し、又は、認識することができたと認められることを要すると解するのが相当である」

 

とした裁判例(大阪地裁平成27年12月14日判決)があります。

 

以上の裁判例などから、裁判所としては、監査役が調査権限を行使して積極的に調査を行う義務を有するのは、

 

①取締役が違法な業務執行や善管注意義務違反をしている事実があり、

②その事実を認識し、又は認識することができた場合(すなわち、調査の端緒となるべき事情が存在する場合)

 

という枠組みの中で判断しているものと考えられます。

 

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