スタッフの「様々なモチベーション」が変化したワケ
企業型確定拠出年金は、会社が拠出した資金を従業員が運用して、老後のための資産を増やすものです。このため、従業員一人ひとりの意欲や知識が、運用結果に大きく影響します。「すべて会社任せで結果だけを受け取る」という形の、従来の退職金制度と比べて、この点が大きな違いです。
多くの会社で、企業型確定拠出年金の導入、運用をお手伝いした私の経験上、導入後すぐの時点では、従業員の意識変化はなかなか表れません。導入後、2、3年して運用資金がある程度の金額になり具体的な成果が見えてくると、がぜんやる気が出てきて、自分から勉強を始めたり、積極的に運用する姿勢になるのが、比較的多いパターンです。
X医療法人の場合も、「こんなに増えるものなのだな。それならもっと掛金を増やしてみようか」「コロナ禍のなかでもかなり利益が上がった」といった社員の会話を耳にすることが、導入から2年ほど経った頃から増えてきたといいます。
■導入後に改めてメリットを実感
変わったのは、スタッフの運用に対する意識だけではありませんでした。
「直接的にどこまで関係しているかは、はっきりとは言えませんが……」と前置きをしたうえで、「確定拠出年金を導入する前に比べて、スタッフのモチベーションが上がった感触はあります」とA理事長はおっしゃっています。企業型確定拠出年金導入が、スタッフの仕事に対する姿勢にも好影響を与えている実感があるというのです。
「今後も運用を続けて、運用資産がさらに大きくなってくれば、スタッフの『ここで一生懸命働こう』という気持ちがもっと強くなってくれるのではないかとも感じます。従業員のモチベーションが高まれば、定着率も上がるでしょう。
既存スタッフがパフォーマンスを上げてくれて、気持ちよく働いてくれれば、より事業もうまくいき、さらにモチベーションが高まるという好循環が生まれるのではないかと期待しています」
実は、歯科医院では、多くの歯科医師が、ある程度の経験を積むと独立を考えるようになるといいます。そのなかで、開業後の収入や社会保険、年金の負担と今の制度的な充実度を天秤にかけて、転職を思い止まるストッパーの役割を、企業型確定拠出年金が果たしてくれているのではないかと、A理事長は考えています。