(※画像はイメージです/PIXTA)

中学受験専門カウンセラー安浪京子 × 教育ジャーナリストおおたとしまさ。「そもそも学校にいかずに中学生のうちから東大受験専門塾に通って鍛えるのが一番強い」と教育ジャーナリストのおおた氏は指摘します。言葉の真意とは。 ※本連載は安浪京子氏、おおたとしまさ氏の著書『中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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中学受験に向いていない子は詰め込みになる

■中学受験に向いていない子ほど「詰め込み学習」になる

 

おおた 何が何でも最難関校合格を目指して、中学受験勉強がこのためのただの苦行になってしまうのはすごくもったいないと思うんですよね。“正しく”中学受験勉強して、その範囲で合格できる学校に行けばいいと思う。

 

そこで、きょうこ先生に聞いてみたかったのは、効率よくパターン学習をした子が得点をしやすく合格しやすいという事実があるけども、パターン学習は「無味乾燥な詰め込み」になりやすいし、長い目で見たら子どものためにならない。このバランスをどうとったらいいのでしょう?

 

安浪 従来型の中学入試でいうと、やっぱり受験勉強に向いていない子は向いていないんですよ。言い切っちゃって申し訳ないのですけど……。

 

おおた 向いていない子はいるだろうなと思います。

 

安浪 入試に必要な学習内容と、入試までの持ち時間が決まってますからね。向いていない子は、どうしても「無味乾燥な詰め込み」になってしまう。従来型の中学入試では、塾が入試から逆算して3年間で習得できるようカリキュラムを組みます。だから、毎週毎週、消化する単元が決まっている。興味がある単元を何週間もかけて、興味のない単元を数分で終わらせる、ということができないんです。

 

でも、そこに楽しくのっかっていける子は、習ったつるかめ算が中学以降の積分にもつながるだろうし、地理・歴史も複合的に血肉になります。

 

おおた それはよくわかります。

 

安浪 主催しているセミナーでは、6年生の夏休み前は「基礎理解が大事」「丸暗記は意味がない」という話をさんざんしています。ところが、入試直前期の11月のセミナーになると、言うことを変えます。入試で典型題しか出ない中堅校、標準校を目指すご家庭には「もう丸暗記しちゃってください!」と言うんです。「ここから詰め込み解禁です!」と。でも、やっぱりジレンマはあって……。

 

おおた 入試の現実と、子どもを伸ばしたいという思いと……。

 

安浪 はい。私は常々、入試問題を出す学校側が中学受験の算数を通して何を身につけさせたいかをちゃんと持っておくべき、と考えています。たとえば、「場合の数」の勉強をするとき「何通り」という正解を出す能力のある子がほしいのか、もれなく自分の手で数を書き出せる能力のある子がほしいのか。その目的によって、学校側の出題が変わってくるべきだと思うんです。

 

後者の、「もれなく自分の手で書き出す」能力を求めるのであれば、あらゆるレベルの子が対応できます。でも、今の出題傾向や大手塾のカリキュラムでは、勉強が苦手な子には厳しい。そういう子は効率よくパターン学習をしないと模試で点をとれないし、受からないシステムになっているんです。

 

おおた 大学受験にも言えることですね。中学のうちは1点2点にこだわらない勉強をしておいて、高校3年生になってからはひたすら詰め込む。この大学に入るために必要なものがこれだけあるのなら、そのときは我慢してやるしかない、ということ。

 

安浪 入試制度がそうある以上は、知識の詰め込みでしのぐ面が出てくることもあります。

 

おおた 僕は学校や教育の理想を書いていますけど、とはいえ、勉強する側はきれいごとだけじゃすまされない。きょうこ先生がジレンマを感じながら子どもと向き合っていること、よくわかります。

 

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中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール

中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール

安浪 京子 おおた としまさ

大和書房

中学受験では、親が子どもをサポートしようと一生懸命になるほど、無意識に子どもと一体化し、中学受験の迷信に縛られて子どもを追い詰めてしまいがちだ。子どもの人生は合格発表の瞬間に終わるわけではない。大人が子どもの受…

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