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欧州景況感指標:高水準を維持するも、ドイツの景況感に減速感が見られる
IHSマークイットが2021年11月23日に発表したユーロ圏の11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は58.6と、市場予想の57.4、前月の58.3を上回りました(図表1参照)。
ドイツのIfo経済研究所が11月24日に発表した11月の独Ifo企業景況感指数は96.5と、市場予想の96.7、前月の97.7を下回り、4月以来の低水準となりました(図表2参照)。今後半年の見通しを示す期待指数も低下しました。
どこに注目すべきか:製造業PMI、独Ifo企業景況感指数、ショルツ
ユーロ圏の景況感を11月のPMIで見ると高水準を辛うじて維持しました。ただユーロ圏で経済規模が最大のドイツの景況感をIfo指数で見ると軟調となっています。どちらが実態に近いかといえば、足元のユーロ安を見ても独Ifo企業景況感指数の方が実態に近いと思われます。独経済の先行きが不透明となる中、同国の舵取りはショルツ氏にゆだねることとなります。
まず、底堅さを見せた11月のユーロ圏製造業PMIを振り返ります。11月のユーロ圏製造業PMIは市場予想を上回ったように「意外に強かった」のが第一印象でした。内容を見ても先行きを示唆する新規受注指数は50を大きく上回り受注が当面の下支え要因と見られます。
ただ、ユーロ圏製造業PMIに注意が必要です。ユーロ圏ではエネルギー価格上昇や供給問題でコスト増に直面しています。供給問題では納期の長期化が見られ、通常であれば生産活動が活況という解釈から納期の長期化はプラス要因ですが、現状では割り引く必要があると思われます。
別の注意としてユーロ圏の景気回復度合いに違いが見られることです。11月製造業PMIについて見ると、フランスの製造業PMIは54.6と、前月を上回り堅調でしたが、ドイツの製造業PMIは57.6と小幅ながら前月を下回りました。
そこで、次にドイツの景況感を独Ifo企業景況感指数で確認すると(図表2参照)、今年春をピークに減速傾向です。気がかりなのは6ヵ月先を示唆する期待指数が94.2と、今年6月をピークに5ヵ月連続で低下していることです。
ドイツ製造業はこの半年ほど減速感が強まっています。その背景として、主要な貿易相手である中国の景気減速が考えられます。また、ドイツは自動車を主力産業とすることから、半導体不足など供給問題が生産を抑制したと見られます。さらに足元では新型コロナウイルスの感染再拡大の影響も深刻です(図表3参照)。
欧州の足元のコロナの感染状況を見ると、ドイツなどのように感染が深刻な国と、イタリアやスペインなど感染は見られますが相対的に感染が抑制された国とに分けられます。コロナ感染が、今は感染が抑えられた国にも広がるのか、それとも収束するのかなど今後どのように展開するのかを予測はできませんが、すでに感染が拡大しているドイツなどでは少なくとも短期的に若干景気の下押し要因となることが見込まれます。
そのドイツの新たなリーダーに社会民主党(SPD)のショルツ財務相が就任する方向です。想定される政策については正式な就任を待って別にレポートする予定です。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『高水準を維持も減速感が続くドイツ』を参照)。
(2021年11月25日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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