「座っているこの椅子は特別なものだぞ」――。ある日、ビートたけしがテレビの番組で話したという。気づくことで、送るその後の芸能生活は全然違うものになり、その気づきによって得られた教えは、もうどこの世界でも通用する大切な教えになるという。その教えとは。※本連載は、ビビる大木氏の著書『ビビる大木、渋沢栄一を語る』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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失敗したって命とられるわけじゃない

やれるところまで、妥協せずにとことんやれ。あとは天命に任せて悔やむな
自分のつくすべき事をつくして、それから先の運命は天命に委せよ。
【『渋沢栄一訓言集』一言集】


■言われた打順で仕事をする

 

僕は、巨人軍の亀井善行選手なんです。いろいろな監督に僕は呼ばれて顔を出して、オンエアの仕方で、「今日、大木は8番で打ってくれな」「今日珍しく1番な」と言われると、「わかりました」みたいな、本当に日々打順が変わるわけです。

 

ときには、「とりあえずスタートはベンチにいてくれ」という場合もあります。途中で、「大木いくぞ」ということもありますから、言われたとおりに対応します。

 

ですから、いろいろな打順、ポジショニングを経験することは、46歳の僕にとって、これからどんどん大人になっていくうえでは、プラスになることが大きいと思っています。

 

ただ、見る人によっては、器用貧乏と言ってくるわけです。こちらは器用貧乏ではなく、監督が望まれることに不器用なりに対応しているだけです。言われたら、とりあえず「やらなきゃな」と思うわけです。そのために、スタジオに行っているわけですから。

 

それで、器用貧乏みたいなことを言われると、「うーん」と唸り声を上げて、難しい表情の僕になっているはずです。

 

そこで、監督に言われたから今日は6番というときには、「じゃあ、プラスアルファで何をするか」ということなんです。そのプラスアルファが見つからないときもあるので、「ビビる大木、苦しむ46歳」になります。(GGO編集部注:2020年に執筆した時点の数字です)

 

これは、僕に限らず同世代のお笑い芸人たち共通の思いです。

 

■器用、不器用。どっちでもいいが、「生きていかなきゃならん!」

 

「大木さんは、器用なんですか?」と雑誌の取材でも質問されることがあります。「僕、器用じゃないですよ、不器用な人間なんです」と答えます。仕事をしていても、「大木さん、器用だよね」と言われます。

 

たぶん、相手は好意的に言ってくれているのでしょう。そして、「ああ、器用に見えてるんだ。そうか、僕の裏の気持ちを知らないからそう見えているのかな」と思っています。しかし、問題は「器用か、不器用かの問題ではなく、どちらにせよ、生きていかなきゃならん!」ということです。

 

そうなんですよ、結局は。「器用であろうがなかろうが、生きていくしかない」という前提で、生きていく。そうなれば、努力するでしょう。ここに、お笑い芸人ビビる大木46歳の矜持があると思っています。

 

たとえ、今日の収録時にミスしようが何しようが、どっちにしろ、「生きていかなきゃならん」。ここで、日本中の「中間管理職」の方たちもそんな気持ちで生きているんだと思うと、勇気がふつふつと湧いてくるんです。

 

それから、「もう一つうまくいかないな」というときに、僕の友達のお母さんに昔、言われたことがあります。「失敗したって命とられるわけじゃないんだからいいじゃん、失敗ぐらいなんじゃ」と言われて、本当に気が楽になりました。その意味と同じで、渋沢さんのこの言葉も温かいなと思いました。

 

「生きていかなきゃならん!」という僕の内側から生まれる声なき声に、とことん努力して、あとは「天命に任せる」。

 

ありがとうございます、渋沢さん!

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ビビる大木、渋沢栄一を語る

ビビる大木、渋沢栄一を語る

ビビる 大木

プレジデント社

歴史好き芸人・ビビる大木が、 同郷の偉人・渋沢栄一の遺した言葉を紐解く! 「はじめまして、こんばんみ! 大物先輩芸人と大勢の後輩芸人の狭間で揺れる40代『お笑い中間管理職』の僕。芸人としてこれからどうやって生き…

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